KAIGOLABの最新情報をお届けします。
日本の人口減少にともなって、様々な店舗サービスは消えていきます。スーパーやコンビニもない地域が増えることで、地域によっては、自動車がなければ、そもそも生命を維持できない(衣食住の食が欠落する)ことになります。
これまでも、多くの地方においては、自動車が生活必需品になってきたわけですが、今後は、この様相が強まります。しかし同時に、高齢化が進むことで、高齢者の運転事故と免許の返納という話題も深刻化してきています。
そうなると、いわゆる買い物難民と呼ばれる人々が激増してしまうのです。そうした状況において期待されるのは、自宅の近くまでやってきて生活必需品を売ってくれる移動販売ということになります。しかし移動販売の4割は赤字というのが現実であり、営利企業の活動としては継続できない可能性が高くなっています。
経済産業省によれば、なんらかの理由によって買い物に支障のある人(買い物弱者)は、全国で700万人にもなるそうです。それだけ買い物に苦労している人がいるなら、移動販売は儲かりそうなものです。しかし移動販売には、ガソリン代や人件費など、想像以上に多くのコストがかかるのです。
このコスト問題をなんとかするには、公的な助成金を与えつつ、住民同士が助け合うような、人件費のダンピングが必要になります。これを現実に進める自治体も出てきました。以下、毎日新聞の記事(2017年11月26日)より、一部引用します。
一人では買い物に行けない「買い物難民」の解消と、高齢者の「見守り」を同時に実現しようと、青森県五所川原市七和地区で今月、販売車で食料品や生活用品を届ける社会実験が始まった。企業による移動販売は他地域にもあるが、七和地区の取り組みは地域の見守り機能も備えた住民主体の活動になっている。(中略)
移動販売は、地域住民らでつくる「七和地区活性化協議会」と県民生活協同組合が連携して実施。県民生協が軽トラックを無償貸与した。700~800点の商品を載せ、地区内の2ルートを週2回ずつ運行する。(中略)
移動販売は国の補助金を活用しており、来年3月末まで。運転手の確保や高齢者の異変を察知した時の対応、採算性の見通しなどを検討しながら継続的な運行を目指すという。飛嶋事務局長は「人口がどんどん減っていく中、住み慣れた地域で暮らしていくためには模索が必要。まずはチャレンジしたい」と話している。
この青森県五所川原市のケースでも、そもそも軽トラックが無償供与だったりして、とても民間では採算が取れず、やれない事業であることがわかります。さらに気になるのが、この移動販売を実際に行う人の人件費です。民間企業にいるのと同じだけの人件費が出せるのかというと、おそらくは難しいでしょう。
住民主体の活動ということにすれば、こうした活動は、実質的にボランティアということになる可能性が高いと思われます。つまり、移動販売をする人の人件費は、ボランティア価格になりやすいということです。
こうした活動を継続するには、ボランティアの長期的な確保が鍵になります。それが実現されることは、なんとなく素晴らしいことのように聞こえるかもしれません。しかし本当は、ボランティアに頼りすぎると、逆に大きな課題を生み出してしまうこともあるのです。
ボランティアがいるところには、民間企業は絶対に参入することはできません。民間企業からすれば、そこでは、人件費がダンピングされていることになり、とても競争に勝てないからです。そうしたところで、ボランティアの確保ができなくなれば、その地域は完全に人が生きるための機能を失うことになるでしょう。
だからこそ、本来は、民間企業でやれる事業は、営利目的の民間企業がやるべきなのです。人の善意に頼るのではなく、単純に儲かるということが、長期的な地域活性化には必要なのです。それをあきらめたとき、その地域は、まず後戻りできない状態になってしまうわけです。
真の地域活性化とは、その地域で暮らす人々の収入が上がっていき、その地域の人々が使えるお金(可処分所得)が増えることで新たな雇用も生まれるという「あたりまえのループ」を生み出すことです。そもそも、ボランティアができるのは、そうして十分な収入が確保できている人だけであることも、忘れてはなりません。
サービスの受益者が、支払い能力を持たないところには、どうしてもボランティアが必要です。しかし、本来であれば民間企業が儲けるべきところにもボランティアが必要になり、そうしたボランティアには十分なお金が支払われないとすれば、どうなるでしょう。それが地域活性化になるとは、とても思えないのです。
※参考文献
・毎日新聞, 『買い物難民解消と高齢者見守り 移動販売で一石二鳥』, 2017年11月26日
KAIGOLABの最新情報をお届けします。