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デイサービス(通所介護)とは、要介護者(利用者)が自宅から専門の施設に通って各種のサービスを受ける形式の介護サービスです。送迎がつくのが普通で、食事と入浴のサービスもあるところが多く、さらに、滞在を楽しめるようなレクリエーションも提供されたりします。
介護という視点からは、デイサービスで身体を動かしたり、そこで友達を得て交流したりと、心身両面での健康促進が可能になります。また、介護をする家族からしても、要介護者がデイサービスに通っている時間は介護から解放されるためレスパイトにもなります。
たとえば、指導員がついて筋力を高めるようなエクササイズを行ってくれるようなデイサービスは、一般のフィットネスクラブに負けない品質のサービスを提供してくれます。ただ、デイサービスは介護サービスですから、介護保険が適用されることで、一般のフィットネスクラブとは比較にならないほど安い利用料だったりするのです。
ですから、要介護状態になったら、心身の衰えを食い止めるために、こうしたデイサービスは積極的に活用したいところです。しかし、こうしたデイサービスを活用する要介護者がいる一方で、デイサービスを嫌う要介護者も、意外なほど多数います。
介護をする家族からすれば、要介護者がデイサービスに行ってくれないと、介護から解放されません。ですから家族は、なんとか要介護者を説得するのですが、いちどデイサービスを嫌ってしまった要介護者を変えるのは、かなり難しいものです。
デイサービスにやってくるのは、基本的には要介護者です。考え方によっては、それは要介護者を隔離する場所とも言えます。家族にとっては介護から解放される時間かもしれませんが、要介護者からすれば、社会的なお荷物をひとまとめにしておくところにもなりかねないのです。
これは、社会福祉の理想であるノーマライゼーションの視点からしても、かなり問題のある状態です。ノーマライゼーションを日本語に翻訳すれば「普通の状態にする」という意味になります。なんらかの障害を持った人を、特別な場所に隔離してしまえば、それは「普通の状態」ではないわけです。
心身の健康のために運動をするのであれば、なにも、要介護者だけを集めるのではなく、老若男女、障害のあるなしに関わらず、誰もが同じところに行けたら理想なのです。その上で、要介護者のサービス利用料は、その一部を介護保険でカバーできるようにすれば、社会福祉の理想に近づけます。
様々なケースはあるものの、要介護者がデイサービスを嫌う理由には、デイサービスが「普通の状態」にはないことへの反発という側面があります。要介護者ばかりの場に行けば、自分が、通常の社会から追いやられているような感覚になるのも仕方のないことでしょう。
そうしたデイサービスの場で、自分よりも深刻な状態にある要介護者に出会ったりすると「将来、自分もああなるのか」という気持ちになるので嫌だという意見に出会うことも多くあります。多くの高齢者が、自分が要介護状態になっても、社会の一員として「普通の状態」でありたいと願っているのです。
デイサービスを経営する人々も、このあたりの課題は、しっかりと把握しています。その上で、託児所とデイサービスを混ぜ合わせた宅幼老所(幼老複合施設)が生まれていたり、普通のフィットネスクラブが介護予防に乗り出してきたりといった動きが見られるのです。
介護サービスの提供者は、介護という枠を超え、より地域に密着した一般向けのサービスを充実させていくことで、ノーマライゼーションに近づいていけます。逆に一般のサービス提供者は、バリアフリー化を極限まで進めることでノーマライゼーションが実現できるでしょう。
もちろん、こうしたことを実行するには、多くの困難もあります。そもそも法律が邪魔をして、進めにくいところもあるようです。また、一般の施設が要介護者を受け入れようとすれば、介護の専門職を配置しなければなりません。しかし、そうした人材の採用は簡単ではありません。
ただ、良かれとおもって、要介護者に特化した商品やサービスを作ると、返ってノーマライゼーションの理想から遠ざかってしまうことがあるという事実は、理解しておきたいです。これは本当に多く見られる失敗ですので、新規で介護業界に参入しようとしている企業は、特に注意してもらいたいところです。
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