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過去にも記事にしていますが、親を地方から呼び寄せての同居は、トラブルの元です。これは、介護の現場では、広く知られている話です。ですが、世間一般には、この話は、あまり認識されていないことも多いようです。
親にとっては、長年暮らしてきたところからの引越しには「リロケーション・ダメージ(引越しにともなう精神的ダメージ)」がともないます。また、人間には相性というものがあります。相性はなにも、人間との相性だけではありません。その土地の気候や文化といった面でも、相性が合わないということはよくあります。
とにかく、いざ、同居してみて、相性が合わなかったときに、親にはもはや帰る場所がないという状況だけは避けるべきでしょう。そうしたリスクがあるにも関わらず、親孝行したいという気持ちから、親を地方から都市部に呼び寄せるという決断をする人も多くいます。
しかし、それが本当に親孝行になるのかどうか、様々な側面から考えてみることが大切です。そうした側面のひとつとして見落とされがちなのが、地域の介護のサービスレベルです。あくまでも一般論にすぎませんが、都市部における介護のほうが、地方よりも優れているということはないのです。
都市部は、すべての生活サービスが、地方よりも優れているように感じられるかもしれません。しかし、それは事実ではありません。特に社会福祉の分野では、地価が高い都市部ではコストが高くなりすぎて、本来は直接的に社会福祉のために使われるべきお金の少なからぬ部分が、地主に渡ってしまうという運命にあります。
これに対して地方は、医療の場合もそうであるように、意外なほど、ヘルスケアの環境は整っているのです。「東京一極集中」というのは、ことヘルスケアに関しては、正しくありません。むしろ、逆転現象さえ見られるくらいです。
自分が暮らしている自治体と、親が暮らしている自治体の医療・介護力については、簡易ですが、日経ビジュアル・データのサイトから確認することが可能です。まずは、このサイトで、親の暮らしている自治体を確認してみてください。
親の要介護度が上がってしまい、いよいよ在宅介護では対応できないとなったときは、特別養護老人ホーム(特養)を考えないとなりません。しかし、安価であり、かつサービス内容が充実している特養は、どこも満室であることが多いのです。特養への入居を待っている人は、少なくとも、全国で50万人はいます。
ところが、です。なかなか入居できないことで有名な特養であっても、地方なら、意外とすんなり入居できる可能性があります。地方でも特養は満室なのですが、それでも、都市部よりは、ずっと入りやすい状態にあります。そしてこの状態は、今後さらに顕在化してくるかもしれないのです。
その理由は、地方においては、若者だけでなく、高齢者の人口も減り始めているからです。最近、秋田県の人口が100万人を割ったことが話題になりましたが、以下、その秋田県のニュース、秋田魁新報の記事(2017年4月23日)より、一部引用します。
秋田県東成瀬村の特別養護老人ホーム幸寿苑(定員50人)の入所待機者数は近年、減少傾向にある。数年前まで村民の待機者は50人ほどで推移していたが、昨年は約40人に減少。併設するショートステイの利用者数も減っており、本年度からは6床減の10床体制に変えた。
「人口減少の影響が出ている。いずれは入所者を探さなければならない状況になるかもしれない」と谷藤勉施設長は話す。現在、介護職員23人を配置しているが「施設規模の現状維持は考えにくい。これからは身の丈に合った運営が求められる」と続ける。
「東京一極集中」というのは、若者については、確かにそうした事実が認められます。しかし高齢者について考えた場合、東京をはじめとした都市部には、それほど魅力はないかもしれないのです。実際に、50〜74歳の年齢層に関しては、東京圏からの流出のほうが人数的に多くなっています。
親を思う子供としての視点からは、都市部の便利さが強調されて見えるかもしれません。しかし、それは必ずしも正しくないかもしれないのです。そうした固定観念から自由になって、親のことは、できるだけ住み慣れた地域で、これまで築いてきた関係性を維持するという視点から考えたほうが良い可能性があります。
とにかく、相手が誰であっても、同居というのは、想像以上にストレスのあるものです。さらに介護ともなれば、10年以上という期間に渡って、関係性が続きます。ストレスのないリラックスした空間であるはずの自宅が、ストレスの発生源になってしまっては、もともこもありません。
※参考文献
・秋田魁新報, 『100万人割れ(1)迫る高齢者の減少』, 2017年4月23日
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