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2035年、日本で配偶者がいる人は、男性で55.7%、女性で49.3%になるそうです。社会で暮らす女性の過半数に、配偶者がいない状況になるのです。ここには、ずっと未婚の人、結婚していたが離婚した人、配偶者に先立たれた人など、様々なケースが含まれます。
すでに、日本で最も多い世帯の形は、単身世帯(ひとり暮らし)です。2035年には、単身世帯が全体の4割を超えるとも予想されています(東洋経済オンライン, 2017年)。予想は外れるかもしれませんが、それでも、単身世帯が増えていくことは間違いありません。
65歳以上の高齢者に限ってみると、2005年には387万世帯だった単身世帯は、2030年には717万世帯に、ほぼ倍増すると考えられています。60〜85歳の人665人に対する調査では「将来、一人暮らしになる可能性はほとんどない」と回答した人は、わずか12.7%でした(小谷, 2012年)。
家族関係が希薄になり、結婚しなくてもよいという価値観も広がりつつあります。それ自体には、良い悪いということはなく、社会的な選択と考えることもできます。ただ、ひとり暮らしには、明確なデメリットもあるのです。
ひとり暮らしの問題点としては、まず、買い物や調理、掃除や洗濯といった家事の負担が挙げられます。家事は、1人分として実行するのも、2人分として実行するのも、その労力はほとんど変わりません。
単身世帯ではなく、誰かと暮らしている場合は、役割分担をすることで、家事にかかる労働を減らすことが可能です。単身世帯では、特に、体調を崩したときなどは、家事に困ります。
家賃や公共料金の負担も、単身世帯では厳しくなります。共有スペース(トイレ、風呂、台所など)があるため、2人で暮らしているからといって、2倍の面積が必要ということにはなりません。公共料金もまた、共有するもの(冷暖房、冷蔵庫など)があるため、2人だから2倍ということにはなりません。
食費は、もしかしたら半分にできるかもしれません。しかし、1人で暮らしていて、自分のために調理するのは、なかなか面倒です。外食やコンビニ弁当が増えるのも、仕方のないことでしょう。これが原因で、2人暮らしで調理をする場合よりも、不健康であり、返って高くつくかもしれません。
防犯という面からも、1人で暮らしているのは、デメリットになります。特に、女性のひとり暮らしには危険もあり、強盗に怯えながらの生活は、精神衛生上も良くない可能性が高いと考えられます。
また、高齢者になると、1人分の年金なのか、2人分の年金なのかで、収入に差が出てしまいます。タンス、掃除機、冷蔵庫といった共有財産を買う場合、収入が2人分あると、当然、有利になります。
そしてなにより、古代から群れを組んで暮らしてきた人間にとって、1人で暮らすことは、精神的なストレスになります。寂しいという感情は、それが大きくなりすぎると、危険です。このように、ただ普通に日々を暮らしていく上で、支出面でも収入面でも、安全面でも精神面でも、助け合えるパートナーのいない単身世帯は苦しくなるのです。
単身世帯のデメリットは、特に婚姻関係などにない人同士が1つ屋根の下で暮らす「シェアハウス」があれば、解消することが可能です。ある意味で、友達以上、家族未満という関係性であり、むしろ現代的なのかもしれません。
介護という文脈からは、複数の高齢者が1カ所にいてくれたほうが、介護の効率が上がるだけでなく、見守りといった面からも安心です。趣味を同じとするような複数の高齢者が仲良く暮らしていれば、社会参加という意味(ICF)からも、単身世帯よりも、より良い状態になる可能性も高くなるでしょう。
単身世帯でなくても、複数の2人暮らし以上の世帯が、お互いを助け合うように、1つの不動産を共有するような「シェアハウス」もありえます。共働きで子供を育てているような場合、そのほうが、子育面でのメリットがある可能性もあります。
過去の常識は、現在の非常識だったりするでしょう。未来の常識もまた、現在の非常識にもなりえるのです。社会は、ただ合理的な方向に進んだりしませんが、こと「シェアハウス」の可能性については、今後も注目していく必要があるでしょう。
※参考文献
・東洋経済オンライン, 『2035年「人口の5割が独身」時代がやってくる』, 2017年1月20日
・厚生労働省大臣官房統計情報部, 『グラフでみる世帯の状況』, 2014年12月15日
・小谷 みどり, 『ひとりで暮らす高齢者の問題』, 第一生命経済研究所, Life Design Report, 2012年1月号
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