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高齢者の運転免許返納、代理手続きができるように(高齢者の自動車運転事故)

高齢者の運転免許返納、代理手続きができるように(高齢者の自動車運転事故)

高齢者による自動車運転事故の特徴

ニュースなどで、高齢者による自動車運転事故が報道されることが増えてきました。実は、自動車運転事故は、年々減少しています。その中で、高齢者による事故だけが、横ばいで推移しています。今後も、高齢者による事故だけが減らないという状況が予想されます。

まず、高齢者による自動車運転事故(四輪)は、早朝や深夜ではなく、明るい日中に起こることが多くなっています。これは、単純に、早朝や深夜には自動車を運転しないという、日常生活のリズムを反映したものでしょう。高齢者は主に、買い物や通院のために自動車を運転しています。

また、高齢者は、小・中規模の交差点において事故を起こすことが多いことがわかっています。交差点では、周囲の変化する道路状況を瞬時に判断する必要があるので、身体機能が低下している高齢者にとっては、運転が難しくなるということです。

左折時に自転車などを巻き込む事故が発生しやすい点にも注意が必要です。これは、高齢者になると、体をひねって後方を確認するという動作が辛くなり、左側の後方確認が十分にできなくなるからと考えられています。

特に75歳以上になると、周囲に自動車や自転車、人がいないという思い込みから、確認を怠る傾向があることがわかっています。歩行者や自転車を追い越すときの接触事故が多いのも、これが原因と考えられます。

決定的なのは、信号無視です。高齢者になるほど、信号無視の割合は増えていきます。ほとんどすべてが、意図的な信号無視ではなくて、信号を見落としてしまうことによる信号無視です。高齢化が進む日本では、信号が青だからということで、左右の確認をせずに信号を渡るのは事故に巻き込まれる可能性が高く、危険です。

高齢者の運転免許返納、代理手続きができるように

高齢者の運転免許証の返納が、家族や介護者による代理手続きが受け付けられるようになってきました。まだ、日本全国の都道府県で可能ということろまでは行っていないのですが、時間の問題でしょう。これまでは、運転免許証の返納は、本人が窓口に出向くことが原則だったのです。

この運転免許返納の代理手続きは、以下のような流れで進められます(2016年11月2日の朝日新聞の記事より引用)。これは島根県のケースであり、他県では少し異なる可能性もありますので、その点については注意してください。

(1)代理人が警察の窓口で委任状の用紙を受け取り、手続きの説明を受ける。
(2)返納する本人が委任状を作り、代理人に預ける。
(3)代理人が委任状を窓口へ。警察が本人に電話をかけて意思を確認する。
(4)運転免許証の取り消し。
(5)希望者には警察が運転経歴証明書を交付する。

運転免許返納で、高齢者の自動車運転事故は減らせるけれど・・・

まず、運転免許証の返納によって、高齢者の自動車運転は減り、結果として、高齢者の運転による自動車事故も減るでしょう。ただ、運転をしなくなることで、要介護者が増えてしまう可能性が高まります。

高齢者は、歩いて移動するのが辛くなるから、自動車の運転をするという背景もあります。それでも、自動車であれば、なんとか買い物や病院に行けたりもします。そうした外出が、高齢者と社会の接点を増やし、ほんの少しでも歩いたりするので、要介護の状態にならずに済んでいたというケースもあるでしょう。

しかし、運転免許証の返納によって自動車の運転ができなくなった高齢者は、外出することが少なくなります。すると、ただでさえ弱っていた体がさらに弱くなり、要介護状態になってしまうかもしれないのです。ですから、運転免許返納は、体を鍛えて徒歩での外出ができるようになるためのトレーニングとセットでないとならないはずです。

そして、忘れてはならないのが、認知症の高齢者の場合です。認知症の高齢者は、自分の運転免許が返納されていることが理解できない可能性があります。その場合、無免許状態で運転し続けてしまうかもしれません。ですから、認知症の高齢者の場合は、運転免許返納が有効にならない可能性が高く、特別な配慮が必要です。

※参考文献
・朝日新聞, 『高齢者の運転免許返納、家族や介護人の代理手続きも可能』, 2016年11月2日
・イタルダ・インフォメーション, 『高齢者の四輪運転中の事故 その推移と特徴』, 2007年(No.68)

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