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「相談の鍋(なべ)に入れる」という考え方について(サービス担当者会議)

「相談の鍋(なべ)に入れる」という考え方について(サービス担当者会議)

気仙沼のある人が発した言葉

先の東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市では、現在も、復興に向けた取り組みが進んでいます。KAIGO LAB 編集部も、そうした取り組みの一部で活動させていただいております。

そんな被災地でのある会議において、気仙沼のある人が「○○さんも、相談の鍋(なべ)に入れよう」と発言しました。この人は、会議の進め方がとても上手で、周囲から多くの信頼を得ている有力者です。

会議の達人とも言える人が、鍋という表現をしたことが気になって、後でより詳しく話を聞きました。そして、この言葉の示すところは、介護の世界でも同じように使えると感じたので、ここで共有したいと思います(そろそろ鍋の季節でもありますし)。

余談ですが、日本における鍋料理は、縄文土器の時代にまでさかのぼることができます。「なべ」という言葉は、そもそも「肴瓮(なへ)」からきているそうです。「肴瓮」の「肴」とは魚のことを指し、「瓮」のほうは、土焼きの「かめ」を指しています。「鍋」というのは、本来は、土器の中で、魚を煮ているイメージを持った言葉なのです。

介護の現場では、特に重要になるのは、要介護者(利用者)に関わるサービス事業者の担当者が集まって、ケアプランの内容を議論する「サービス担当者会議」です。この会議を上手に進めるために、日本人の生活と切っても切れない鍋料理についての考え方が(たとえ話として)使えるようなのです。

介護の方針を決める会議において気をつけるべきこと

強調してもしきれないのですが「サービス担当者会議」をうまく運営できるかどうかで、介護の負担は大きく変わってきます。これを主体的に進めるのはケアマネですが、全てをケアマネ任せにしていては、状況の改善が見込めない場合もあります。

冗談のような感じを受けるかもしれませんが、以下、気仙沼の人に教わった考えをベースとして、鍋料理とチームの考え方を対比させてみます。なお、ここの鍋料理に関する記述は「柳原式鍋料理をおいしく作る五カ条」を参考としています。気になる場合は、参考文献から原典を当たってみてください。

項目
柳原式鍋料理
チームの運営
鍋(なべ)
自分が作りたい鍋の性格を把握し、適した鍋を選ぶ。たっぷりの汁を使う。水鍋や煮汁鍋の鍋料理には、保温力があり、化学変化の少ない土鍋が最適。濃厚な煮汁やすき焼きには底が平らな鉄鍋を 自分が作りたいチームの姿をイメージし、それにあった場を選ぶ。取り決めなどをするときは、ホテルのラウンジや、地域包括支援センターの会議室など、自宅以外のほうが気持ちが引き締まることもある。
食材
食材の相性を考え、シンプルを心がける 介護に関わる関係者の相性を考え、必要以上に人数が膨れ上がらないように気をつける。特に、家族の誰に参加してもらうかは難題で、慎重に考える必要がある。
鍋は水が大切。昆布やかつお節は日本の水と相性がよい。なお硬水は向かない チームでの議論においては、テーマが大切。具体的な課題をテーマとすることも大切だが、自由な議論もまた大切。
プロセス
鍋の中を整理し、あくを引きながら煮る チームメンバーそれぞれの意見を整理し、テーマから脱線している話は、タイミングを見計らってカットしていく。
味の調整
煮汁鍋は薄味に。ひとくち食べておいしいと感じるだけでなく、最後までおいしくいただける鍋にしたい 一度の会議で全てを詰め込みすぎない。長期的に議論を続けていける関係性を構築していきたい。

現実の「サービス担当者会議」がうまく行っている人の場合は、なんの参考にもならないかもしれません。しかし、介護職に話を聞く限り、この「サービス担当者会議」が形式化してしまっていたり、家族が参加していないというケースも少なくないようです。

もう一つだけ大切なノウハウを

チームでの会議を進めるにあたっても、実は、身体性が大事になることが、科学的にもわかっています。会議に入る前に、握手をしたり、ハイタッチをしたり、または拍手をしたり、ジャンプするなど、体を軽く動かすといったことは、脳内でオキシトシンを発生させることがわかっています。

お互いに、普段はほとんど会わないような人も参加するのが「サービス担当者会議」でもあります。普段会わない人と、いきなり議論をはじめるのは、心理的に厳しいものです。ですから、議論はいきなり始めるのではなく、なんらかのアイスブレーク(緊張をほぐす活動)をしてから行うことが大切になります。

ケアマネの場合は、アイスブレークについても勉強しておく必要があるでしょう。ですが、家族(介護者)の場合は、アイスブレークに関する知識がないことが普通でしょう。それでも、握手をしたり、誰かの発言があったら拍手をしたりといった簡単なことでも構わないので、意識して身体を使うことを心がけるだけでも、よい効果があるので試してみてください。

※参考文献
・紀文アカデミー, 『鍋料理/教室』
・東洋経済, 『実はチームで働くのが苦手な日本人』

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