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要介護1〜2の生活援助、カットの方針から一転し、継続へ(ニュースを考える)

要介護1〜2の生活援助、カットの方針から一転し、継続へ

要介護1〜2向けの生活援助カットの方針が撤回された?

これまで、厚生労働省では、要介護1〜2向けの生活援助を、介護保険の適用外としてカットするという議論がされてきました。生活援助とは、買い物や調理、掃除や洗濯といった、生活に必要となる基本的な活動を支援するというものです。要介護1〜2の状態にある要介護者は、この生活援助によって、大いに助けられているのが現実です。

この議論が見直されることになったようです。一旦は、要介護1〜2の人の生活援助にも、継続して介護保険が適用されるということになったのです。これは、要介護者や、介護に苦しむ家族にとっては、朗報です。以下、朝日新聞の記事(2016年10月7日)より、一部引用します。

介護の必要度が比較的軽い要介護1、2の人向けの掃除や調理などの生活援助サービスについて、厚生労働省は介護保険として継続する方針を固めた。保険の対象から外して市区町村の事業に移す案もあったが、今回は見送る。介護費用を抑制するため、事業者に対する報酬単価は減らす方向で調整する。

生活援助サービスでは自宅で暮らす高齢者にホームヘルパーらが掃除や洗濯、調理などを行う。「家政婦のように使っている」との批判もあり、2018年度の介護保険制度見直しに向けた議論では、軽度者向けの生活援助サービスが大きな焦点となっている。

それでも、事業者に対する報酬単価は減らされる

それでも、先の報道からも読めるとおり、介護事業者への報酬は減らされることになりました。そもそも、在宅介護を支援する事業は、介護施設の事業よりも、ずっと儲かりません。ただでさえ厳しい在宅介護の事業において、生活援助の報酬単価が減らされるということは、問題です。

今後は、在宅介護がどんどん増えて行きます。そうした中、どうして、在宅介護を支える事業者への締め付けばかりが厳しくなっていくのでしょう。実際に、介護事業者は、かなりの勢いで倒産してきています。

このままでは、在宅介護にとって必要なサービスを提供してくれている事業者の体力が奪われ、法的には受けられるはずのサービスが受けられないというケースが増えてしまいます。また、報酬単価が減らされるのですから、介護職の待遇は悪化していくことにもなるでしょう。

根本的な見直しが必要な段階にきている

介護をめぐる状況がどんどん悪化してきているのは、介護に使える国の財源が枯渇しつつあるからです。もともと、日本の介護保険制度は、介護を家族の責任とせずに、社会でその責任を受けていくことを理想としてはじまりました。しかしもはや、この理想が実現できないことは明らかです。

今のままで推移すると、要介護1〜2の要介護者は、地域包括支援センターの管轄(介護予防)となります。そうなると、要介護者が利用できる介護サービスは極端に減ります。これは、介護の社会化という理想の姿とは程遠いものです。

このまま何も手を打たなければ、介護離職はもちろん、介護殺人や虐待が増えていくでしょう。そうなれば、安倍政権が掲げる新3本の矢のうちの大切な1本である「介護離職ゼロ」が失敗ということになります。

政権は、日本の介護について、真剣に全体像を見直すべき段階にきています。今の介護保険制度では、残念ながら、理想は実現されません。個々の官僚は優秀でも、介護保険制度そのものの改革には、イニシアチブ(主導権)を取れません。

今こそ、政党を超えて、介護保険制度の抜本的な改革に関する議論を開始してもらいたいです。繰り返しになりますが、現在の介護保険制度では、介護の社会化は実現されません。そして、介護をめぐる状況は、どんどん悪化してきており、限界に近い状況なのです。

※参考文献
・朝日新聞, 『介護保険の生活援助、要介護1、2の人向けは継続へ』, 2016年10月7日

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