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買い物は、私たちが日々の暮らしをしていく上で、必要なものを手にいれるための(ほぼ)唯一の手段です。実際に私たちは、幼いころから、買い物を通して広い社会とつながっています。
私たちは、買い物を軸にして、自分自身の生活を管理しているとも言えます。なにを、いくらで、いつまでに、どこで買うのかといったことを考える力は、自立した生活を営む上で欠かせないものです。
買い物は、ただ必要というだけではありません。まず、それ自体が外出の機会を生み出します。そして、様々な品物を吟味することは、日々の楽しみでもあります。さらに、商品の進歩を観察することから、私たちは、社会全体の進歩を感じることができます。買い物は、エンターテインメントなのです。
買い物は、加齢や障害によって、援助なしでの買い物が困難になった要介護者にとっても重要です。買い物は、ただ、必要なものを買い揃えるということを超えて、生きることの刺激でもあるからです。
要介護の状態になってしまった人こそ、買い物は身体を動かす機会になりますし、社会性を保つことにもつながります。実際に、少なからぬ要介護者は、ヘルパーに付き添われる買い物を楽しみにしています。要介護度を上げないためにも、また、介護予防としても、買い物は最適なのです。
ヘルパーに買い物の付き添いをお願いする場合、介護保険が適用されれば、1時間あたり300円程度になります(厳密には諸条件により異なります)。これまでは、要介護1以上の認定を受けている要介護者の場合、こうした買い物への同行(生活援助)については、介護保険が適用されてきました。
厚生労働省は、これまでは要介護1以上であれば受けられた買い物への同行サービス(生活援助)について、今後は、要介護3以上にしていく方針を固めています(2017年の通常国会での法改正になる)。
背景には、介護に使える財源の枯渇と、介護人材の不足があります。この法改正が成立すれば、年間で1,100億円分の財源が削減できる見通しと言います。そして、約30万人の要介護者に影響が出ると考えられています。
この改悪によって、多くの要介護者が、買い物の機会を失います。ここから、要介護者の運動や気分転換の機会が奪われます。それは結果として、要介護者の要介護度の悪化につながるとしたら、かえって財源を圧迫することにつながってしまうかもしれません。
【追記:2016年10月10日】
厚生労働省は、一旦、要介護1〜2の要介護者向けの生活援助を、介護保険の適用範囲として継続する方針を示しました。いつまで継続されるかは不明ですが、ありがたい話です。
まずは、2025年問題の背景を理解しつつ、これ以上の介護保険制度の改悪は阻止したいです。政治家や政党の公約を吟味し、介護について理解のある政治家を支持していきたいところです(もちろん、介護への対応だけで政治家を決めることはできませんが)。
また、いかに文句を言っても、そもそも財源が足りないのですから、状況を改善していくことは困難です。であれば、買い物の大切さを理解しつつ、要介護者が買い物を通した社会参加を続けられるように必要な対策も考えていかないとなりません。
たとえば、頻度を落としてでも、全額自腹での買い物への付き添いをお願いすることも検討すべきでしょう。この場合、1時間で3,000円程度になってしまいますが、それだけの意味もあると思います。辛いところですが、なにも手を打たないでいることはできません。
※参考文献
・YomiDr., 『介護保険、軽度者サービスを大幅見直し…調理・買い物除外など検討』, 2016年1月20日
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