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小中学生でも認知症サポーターになれる!地域で取り組む認知症対策

認知症サポーターのオレンジリング

認知症による行方不明者が1.2万人を超える

時事通信の記事(2016年6月16日)によると、認知症が原因で行方不明になり、家族から全国の警察に届け出のあった人は、昨年1年間で延べ12,208人にのぼったそうです。前年と比べると、1,425人(13.2%)も増えています。

認知症による行方不明者は、統計を取り始めた2012年から3年連続で増加しているといいます。そのうちの98.8%は自力で帰宅したり、家族が発見したりしています。発見された段階で、死亡が確認されてしまう場合もあります。そして、残念なことに、残りの1.2%にあたる約150人については、年末までには発見されていません。

厚生労働省によると、認知症の最大の危険因子は加齢です。65~69歳での有病率は2010年の段階で1.5%ですが、以後5歳ごとに倍増し、85歳では27%に達します。つまり85歳の4人に1人は認知症ということになるのです。

今後、高齢者数が急増するのに合わせて、認知症の人が増えていくのは間違いありません。2020年には、65歳以上で認知症の高齢者の数は325万人に達するとみられています。45歳から64歳で起こるといわれる初老期認知症の患者数も入れれば、この数はさらに増えるでしょう。

典型的な認知症の症状について

認知症の症状が出始めると記憶力に障害が出てきます。特に、昔のことは憶えていられても、ついさっきのことが思い出せなくなります。たった今、会話していた内容を思いだせなかったり、冷蔵庫に入っているものを忘れて何度も同じものを買ってしまったりするのです。これとあわせて失語、失行、失認の症状があらわれます。

失語とは言葉の意味が理解できなくなることや、しゃべりたいことがしゃべれなくなることです。「あれ」「それ」といった指示語が増えたり「トマト」「郵便局」「するように」といった具合に、単語を並べるだけになったりします。

失行とは、運動機能に障害はないのに、意味のある行動がとれなくなることをいいます。たとえば、うがいをして水を吐き出すことができなくなったり、ネクタイがしめられなくなったりします。

失認は感覚に関する機能は損なわれていないのに、対象を正しく認識できなくなることをいいます。いつも通っているオフィスに行く道が分からず、たどり着けなくなってしまったりすることがあります。

こうした症状は数カ月から数十年にわたって持続し、暴言や暴力もともなうことで、家族による介護が限界に達してしまうこともあります。現実に、こうした厳しい認知症の症状と、ギリギリの状態で向き合っている家族は、どんどん増えてきていると考えられるのです。

認知症患者を理解し支える地域の認知症サポーター

こうして増え続ける認知症の人を、地域で支える新たな取り組みが生まれてきています。それは、全国で進められている認知症サポーターの養成です。認知症サポーターとは、認知症について正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守り、支援する応援者のことをいいます。

認知症サポーターになるためには、地域で行われているサポーター養成講座に参加して、60分から90分の講習を受ける必要があります。対象となるのは、地域住民、金融機関やスーパーの従業員、小・中・高校生などです。しっかりと学べば、ほぼ誰でもサポーターになることができます。認知症サポーターに期待されることは、以下の5点です。

(1)認知症に対して、正しく理解し、偏見を持たない。
(2)認知症の人や家族に対して、温かい目で見守る。
(3)近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する。
(4)地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる。
(5)まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する。

2016年3月末現在で、認知症サポーターと、養成講座の講習もできる認知症サポーター・キャラバンメイトも合わせると、全国で750万人が活動しています。もっとも多いのは70代以上の約170万人ですが、10代でも約125万人が認知症サポーターとして認定されています。20代、30代に比べると、10代は倍以上の数のサポーターがいるのです。

この養成講座を受け、認知症サポーターになると、オレンジリングと呼ばれるブレスレットがもらえます。この、認知症サポーター養成講座は、地域における住民講座や小さな学習会として開催されています。受講して、認知症サポーターとして認定されることを希望する場合は、在住・在勤・在学の自治体事務局へ問い合わせてみて下さい。

認知症サポーター自治体事務局連絡先

http://www.caravanmate.com/office/

まずは、認知症がどのような病気であるかを理解するところから始まります。以前にも記事にしましたが、悪いのは認知症に苦しむ人ではなく、認知症という病気そのものです。

病気について理解を深めれば、むやみに相手という人に対して偏見を持たずに接することが出来ます。介護に使える国家の財源が枯渇しつつある今こそ、地域で、お互いを支え合うような流れを作っていく必要が高まっているのです。

※参考文献
・厚生労働省, 『認知症サポーターキャラバンとは』, 2015年12月
・厚生労働省, 『知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト』, 2010年
・時事通信, 『認知症不明1.2万人超=98.8%は所在確認-昨年届け出分・警察庁』, 2016年6月16日

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