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ダブルケアに苦しむ人が25万人を超える(男性8万5千人、女性16万8千人)

ダブルケアが25万人を超える

就業構造基本調査(2012年)の分析結果として

総務省統計局が、全国及び地域別の就業・不就業の実態を明らかにするための調査(就業構造基本調査)を2012年に実施しています。ここから、育児、介護に関するデータも得られており、ダブルケア(育児と介護を同時に行う)の厳しい現状が公表(2016年3月)されました。

まず、育児(乳幼児である子の育児)を行っているのは、999万5千人でした(男性406万人、女性593万5千人)。女性は、男性の約1.5倍、育児を担っています。

次に、介護(日常生活における手助けや見守り)を行っているのは、557万4千人でした(男性200万6千人、356万8千人)。女性は、男性の約1.8倍、介護を担っています。

そして、ダブルケア(育児を行い、かつ介護を行っている)を行っているのは25万3千人でした(男性8万5千人、女性16万8千人)。女性は、男性の約2倍、ダブルケアを行っていることがわかります。

日本のダブルケアに関する基本的なデータ

まず、日本における15歳以上の人口(1億1,081万5千人)に占める割合として、育児のみ(8.8%)、介護のみ(4.8%)、ダブルケア(0.2%)となっています。この数字だけみると、ダブルケアの割合は500人に1人となり、それほど多くないようにも思えてしまいます。

ただし、この就業構造基本調査(2012年)の分析で注意したいのは、育児の対象を未就学児(6歳くらい)までとしており、小学生以上の子や孫、自分の兄弟姉妹の子などは含まれていないという点です。小学生の子供を持ちながらの介護も含めれば、ダブルケアの数字は、倍程度になるはずです。

さらに、この数字は、15歳以上の人口に占める割合であって、本来であれば、高齢者(65歳以上)の人口3,186万人まで含めての分析は、誤解につながりそうです。老老介護を調べるためではなく、ダブルケアについて考えるのであれば、高齢者は除くべきでしょう。

未就学児だけでなく小学生も入れて、さらに高齢者の人口を計算から外すと、ダブルケアの割合は0.6%程度まで高まります。この計算だと、ダブルケアは167人に1人程度と、より深刻な印象になります。

ダブルケアを行っている人のうち、男性は有業者が93.2%を占めます。女性は有業者が47.5%であり、無業(主婦)が48.6%でした。ダブルケアをしているのは主婦が多いと考えられがちですが、実際には、男性も含めれば、仕事をしながらのダブルケアのほうがむしろ多いのです。

仕事をしながらダブルケアをしている人(161,100人)の13.7%は、転職か就業停止を希望しています。転職を希望する理由としては「収入が少ない」が男性で37.3%、女性で34.1%であり、最も多くなっています。また「時間的・肉体的に負担が大きい」としたのが男性で17.3%、女性で18.8%で、次に多い数字でした。

ダブルケアを行っているのは、30歳~40歳代が全年齢層の約8割を占めており、平均は39.7歳でした。また、ダブルケアを行っている人の9.2%は、シングル(配偶者がいない)という状況です(男性3.7%、女性12.0%)。人数ベースで計算すると、シングルマザーで介護もしているダブルケアは、2万人を超えます。小学生以上の子供とのダブルケアまで含めると、これも倍程度になるでしょう。

このデータから、何を考えていかないとならないのか

社会福祉の基本は、不運にも苦しい状況に陥ってしまった人を見つけ出し、遅滞なくサポートを行うことです。ダブルケアの場合、シングル(配偶者がいない)で家計を支える責任がありながら、子育てと介護を同時にこなす状態にある人が最も過酷な状態にあると考えられます。

さらに、男尊女卑が強く残る日本では、女性の年収は男性の年収の半分程度にすぎません。ダブルケアの状態で、転職を希望する理由が収入面にあることからも明らかなとおり、より厳しい状態にあるのはダブルケアの女性です。

自然に見えてくるのは、シングルマザーでダブルケアの状態にある人々(2〜4万人程度)へのサポートでしょう。仕事をしながら子育てをするだけでも大変なのに、そこに介護が乗っているシングルの女性が、これだけの人数いるのです。

こうした家庭にいる子供は、確実にヤングケアラー(介護をする子供)になっていくでしょう。ヤングケアラーは、遅刻・早退・欠席・不登校になりやすいことが指摘されています。

子供の将来とは、すなわち、日本の未来です。ダブルケアの問題は、そのままヤングケアラーの問題にも直結していることを考えると、とにかく早急な対応が求められます。

※参考文献
・内閣府男女共同参画局, 『育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書』, 2016年3月

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