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介護離職の「大雨」が降ります。傘を持っていても濡れますが、傘を持っていなければ、大変なことになります。

介護離職の「大雨」

介護離職の「大雨」が降る

晴れの日に、雨の心配などしないのが人間というものです。しかし、すでに介護離職については「大雨注意報」が出ています。これを無視していたら、企業によっては、存続の危機になるほど、大きなダメージを受けることになるでしょう。

団塊の世代が75歳になるのは、2025年ごろからです。75歳を越えると、介護が必要になる人が急激に増えるのです(要介護出現率が一気に高まる)。ということは、あと10年以内には、要介護となる人が急激に増えるという事件が起こります。

団塊の世代の介護を担うのは、団塊ジュニア世代(現時点で41〜44歳の人々)です。この世代は、そもそも、多くの日本企業において、人数が最も多い層になります。この最も人数が多いところから、介護離職が出るのです。

団塊ジュニア世代は、過去の介護世代よりも、介護離職しやすい状況にあります。その理由は、団塊ジュニア世代は(1)兄弟姉妹が少ない(2)未婚率が高い(3)結婚していても共働きが多い、からです。さらに(4)晩婚化・高齢出産化により子育て中のことも多いのです。

長男の嫁(専業主婦)が担ってきた過去の介護世代よりも、団塊ジュニア世代においては、1人あたりの介護負担が大きくなるのです。さらに子育て中だったりすると、介護と子育てを同時にこなすという「ダブルケア」の状態になりやすいのです。

介護離職を少しでも防止するために;両立相談窓口

企業経営としては、介護離職を防止するために、社内に両立相談窓口を設置することが必要になります。とにかく、従業員に対して、介護の知識をつけることが急務です。介護は「知っていると楽になる」「知らないと損をする」「知っている人だけ助かる」ということが多く、情報戦だからです。

経営者・人事部長などと話をしていて「実際に、介護離職が問題になってから対応すればいい」という意見に出会うことがありますが、これは間違いです。それは「大雨が降ってから、傘を買いにいけばいい」というのと同じです。それでは、ビショビショに濡れてしまいますし、大雨のときの売店では「傘は売り切れ」ということもよくあります。

これから、介護が必要な人が増えていきます。しかし、介護サービスの人材確保が追いついていません。結果として、今後、介護サービスは、受けたくても受けられない状況が顕在化してきます。傘が足りないのです。

本来であれば、特定の介護サービスを受けられたら、仕事と介護の両立ができるケースは少なくありません。しかし、傘が足りなくなっていくことが見えている今、傘の一部は、会社で内製していく必要があるでしょう。

もう、小雨は降り始めています

周囲をよく観察してみてください。介護離職は、すでに始まっているでしょう。その人数はまだ少ないかもしれません。しかし、潜在的な介護離職者を調べてみれば明らかなとおり、今は、日本中に介護離職の「予備軍」がいることがわかるはずです。

現実に、大企業の多くは、介護離職リスクの洗い出しを終えてきています。その結果は、ほぼ例外なく「想像以上に深刻」というものが多いのです。もしまだ、介護離職リスクの調査を終えていない会社があれば、すぐにでも調査をしてください。きっと、この問題の大きさが見えるはずです。

危険が近づいているのがわかっているのに、そこから逃げようとしないのは、人間に備わっている恐ろしいエラーです。自分だけは大丈夫だと考えてしまうのです。しかし、介護問題というのは、ほとんどの従業員が、定年までには経験することになるものです。

「誰のところに介護がはじまるのか」という視点ではなくて「従業員の全員に介護がはじまった場合」を想定して、それでも回る制度や、仕事のプロセスを設計しないとならないのです。

これは小雨では終わりません。大雨になります。傘を持っていたとしても、濡れること自体は避けられません。しかし、傘を持っていないと、本当に大変なことになります。
 

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