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介護相談窓口は、まだ生まれてまもない職種です。しかし、今後の日本企業における介護問題は、どんどん大きくなっていくことが明らかな状況です。これを受けて、各社が、介護相談窓口の設置を急いでいます。しかし、新しい職種のため、その職務内容については、混乱も増えているようです。そこで今回は、介護相談窓口に求められている仕事について、大企業の人事部門長クラスにヒアリングを行い、職務内容を明らかにすることを試みてみました。
介護を理由とした退職、すなわち介護離職を防止するため、企業は様々な施策を打ち出しつつあります。そうした中の目玉に、介護相談窓口というものがあります。これは、仕事と介護の両立に悩む従業員に寄り添い、その両立を実現するためのサポートを行う、大切な職種です。
現在、こうした介護相談窓口としては(1)社外の専門家に委託する方式(2)社内の人材を育成する方式、の2種類があります。
(1)の社外の専門家に委託する方式は、即効性がありますし、短期的には有効です。しかし、社外の専門家は、あくまでも介護の専門家であって、仕事との両立についてはアドバイスができないところが弱みです。
これに対して(2)の社内の人材を育成する方式は、時間がかかるのが弱みですが、介護について学んでいけば、その企業の文化や仕事を知っていることから、両立についてもアドバイスできるようになっていくところが強みです。
そもそも、企業内の相談窓口に求められる仕事とは具体的にどのようなことなのでしょう。仕事と介護の両立を実現するキーマンには、どのような能力や知識が求められるのでしょう。これまでにない職種のため、混乱も多いようです。そこで以下、KAIGO LAB 編集部が大企業(サンプル数;4社)の人事部門長クラスに聞き取り調査をした結果から、7つのポイントにまとめてみます。
まず、その企業において、介護問題がどういう状況にあるのか、定期的にアセスメントすることが求められます。具体的なアセスメント項目としては、少なくとも、以下のような5項目になります。これらの数値が、時系列でどのように上下しているのかを経営陣に報告する必要があります。
(1-1)現在介護をしている従業員の階層別/部署別/年齢別・人数、比率(ファクト分析)
(1-2)現在介護をしている従業員の階層別/部署別/年齢別・両立困難度合い(離職リスク評価)
(1-3)現在介護をしている従業員の階層別/部署別/年齢別・介護支援ニーズ(ニーズ調査)
(1-4)数年以内に介護がはじまると考えている従業員の階層別/部署別/年齢別・人数、比率(将来予測)
(1-5)介護離職をした従業員の階層別/部署別/年齢別・人数、比率(ファクト分析)
少なくとも、経営層・マネージャーは、介護について理解する必要があります。さらに、従業員については、新任マネージャー時点、介護保険に入る40歳の時点、数年以内に介護がはじまる可能性の高い50歳の時点で、介護に関する一般的な知識を伝える研修が必要になります。この研修では、最低限(2-1)会社の介護支援制度についての説明(2-2)介護を理由として離職した場合のリスクの伝達(2-3)介護保険制度の説明(2-4)申請すれば受けられる各種介護サービスの説明(2-5)介護に関する情報の取得方法、について説明を行います。また、パンフレットなどを作成して全従業員に配布し、これを従業員の配偶者にも読んでもらう必要があります。場合によっては、介護に関する知識の到達度合いを、テストによって評価する必要もあるでしょう。
まずは、介護が必要になった従業員の個別インテーク(初回ヒアリング)が求められます。この段階で、各種情報を集めた両立カルテを作成し、保存しておく必要もあります(個人情報保護の面から、この取り扱いについては社内規定を作成する必要もあります)。インテークでは、両立の困難度合い(離職リスク)について1次評価を行います。この1次評価は(3-1)介護に使えるリソース分析;お金、時間、人脈(3-2)要介護者の状況;認知症あるなし、要介護者の人数、要介護者の人脈といったことになります。これをエコマップとして表現することも大事です。
介護は、親の入院などから、ある日突然はじまるケースが非常に多いものです。このとき従業員は、介護に関する知識がないままに、病院からの呼び出しや役所対応などに追われ、パニックになります。このパニックの時期をできる限り短くするため、その従業員に対して介護の基本的なことと、1次評価の結果から、具体的なアクションプランを、この従業員と一緒に作成します。また、今後の見通し(特に向こう1年はどのような状態になるか)についても、介護支援窓口が、予測ベースで伝えてあげられるかどうかも鍵になります。さらに、従業員の代わりに対応できること(書類を取り寄せたり、役所に質問したりすること)が増えると、従業員がパニックによって離職するリスクは相当下げられます。
仕事と介護を同時にこなしている従業員の状況は、時間とともに変化していきます。こうした状況を定期的に把握し、その度に離職リスクを判定し、両立カルテに記載し、保存します。離職リスクが下がってきていれば、嬉しいことです。逆に離職リスクが上がってきていたら、その従業員の上司も交えて、対策を考える必要があるでしょう。特に、ケアマネが従業員に合っていないケースや、従業員が受けるべき介護サービスを受けられていないケースについては注意をして観察し、アドバイスをします。場合によっては、介護施設への入所はもちろん、小規模多機能型居宅介護も検討する必要があるかもしれません。アドバイスは、定期モニタリング時にのみ実施するものではありませんが、放っておくと、少なからぬ従業員は、介護を自分で抱え込む方向に行ってしまいます。向こうからの相談を待たずに、定期的に面談を行うことで、このリスクを避けます。
これが非常に重要な点であり、かつ、社外の専門家には対応しにくいところです。この内容としては、少なくとも(6-1)個別の従業員と、過去のインテークやモニタリングの結果から、介護にかかる負担の将来予測を行う(6-2)その従業員のキャリアに関する希望;譲れること、譲れないことの明確化(6-3)介護にかかる負担の将来予測と、明確化されたキャリアに関する希望から、今後、鍛えていくべき知識・スキルを洗い出す(6-4)これをもとにして、その従業員の年間の学習計画を立てる(6-5)その従業員の上司も交えて、学習計画のリアリティー評価を行い、修正し、学習計画について合意する、といった5段階のステップが必要です。これらを両立カルテにも記載しておきます。
人事制度は、一般には、3年に1度程度は改革されるものです(メジャー変更、マイナー変更の違いはありますが)。究極的には、介護があろうとなかろうと、子育てがあろうとなかろうと、多様な人材が多様な働きかたをして、全社の実績を高めていくような企業だけが、21世紀を生き残ることができます。現在の人事制度の多くは、基本的に、フルタイム、残業をこなし、転勤も受け入れる人だけがマネージャーに上がっていける仕組みになっています。これを、今後、時間をかけて変化させていく必要があります。この変革において、仕事と介護の両立という視点からのリーダーシップを取ることが、介護相談窓口を行っている人材には求められます。
・介護相談窓口は、企業における介護離職を防止するための重要な役割を担う
・介護相談窓口の機能は、外注する方法と内製する方法があり、それぞれに強み・弱みがある
・介護相談窓口の仕事は、少なくとも7種類に分類できる
KAIGO LAB を運用する株式会社 BOLBOP は「介護相談窓口」を内製するための育成プログラム(最低5日間から)を提供しています。この育成プログラムには、各種アセスメント項目やアセスメント方法の伝達、両立カルテの基本フォーマットが含まれます。さらに、インテークや相談のケースワークなども入れています。この育成プログラムは、本人やご家族の同意をいただいた上で、複数の介護現場(介護施設、訪問介護など)を実際に体験しながら、介護について学ぶ形式を基本としています。プバイバシーはもちろん、事故発生時の取り決め(保険加入を含む)などにも配慮をしています。興味のある経営者・人事部の方は、以下よりご連絡ください(研修スロットに限りがあるので、スケジュール組みがボトルネックになる点だけ、ご理解ください)。
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