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企業の介護に対する危機感が上がってきているという話(ニュースを考える)

介護に対する危機感

読売新聞による調査結果報道

読売新聞によるアンケート結果報道がありました(2015年12月16日)。結果として、介護が経営上の課題になるという危機感が、9割を超える企業から寄せられたとのことでした。以下、この報道内容の一部を引用します。

主要企業の9割超が、将来的に介護の問題を抱える従業員が増え、会社経営上の課題になると危機感を抱いていることが、読売新聞が実施したアンケートでわかった。(中略)

それによると、「今後、親などの介護の問題を抱える従業員が増え、会社の経営上の課題になる可能性があると思うか」との問いに、「ある程度」(62%)を含めて、全体で91%が「そう思う」と回答した。

「そう思う」「ある程度はそう思う」とした97社に、どのような影響が出そうか尋ねたところ(複数回答)、「勤務時間に制約のある従業員が増える」(80%)が最多。次いで「転勤に配慮が必要な従業員が増える」(74%)が多かった。

ある経営コンサルタントの話

KAIGO LAB 編集部のつてでお話を伺った、ある経営コンサルタントの話では「日本の大企業の多くで、介護をしている社員の現状把握のための調査が(ほぼ)終わったところ」とのことでした。

そして、その結果に、経営層・人事部は「隠れ介護(=会社に自分が介護をしていることを隠してきた社員)が多くて、驚いている」そうです。今回の読売新聞の調査結果と重なりますが、こうした危機感は、もはや根拠のない不安ではなくて、調査を前提とした事実になってきています。

今後、介護による退職を防止するための施策を作る仕事はもちろん、会社内に「両立相談窓口」を設置する仕事が大事になるでしょう。ここで課題になるのが、介護とビジネス業務の両方を理解した上で、この両立に対してアドバイスできる人材の育成です。

「両立相談窓口」をどう育成するか

求められているは、介護について「だけ」理解している「介護相談窓口」ではなくて、仕事も介護も理解している「両立相談窓口」です。もし、介護について「だけ」理解していればよいなら、それは、介護のプロを新たに採用すれば済む話なのですが・・・。

「両立相談窓口」は、まず前提として、人事業務に精通している必要があるでしょう。相手の過去の業績と、将来のキャリアビジョンを理解した上で、介護がうみだしてしまう時間的な制約から、そのキャリアビジョンの実現が可能なのかを考える力が求められます。

その上で、介護に利用できるリソース(地域で提供されている各種サービス、親族・友人などの協力、親の財産など)を正しく理解し、キャリアビジョンの実現に向けて、それらを上手に組み合わせる力も求められます。

しかし、何よりも重要なのは、仕事と介護の両立に苦しむ社員に「共感」する力です。悩みを深いレベルで理解し、それを一緒になって苦しみ、自分ごととして状況の改善に努められることが大事です。

介護において、もっともいけないこととされるのは「一人で抱え込むこと」です。逆に言えば「両立相談窓口」の仕事とは、本質的には「介護を社員一人で抱え込ませないこと」になるということです。

介護する人・介護を支える人への「共感」を養う方法

キャリアについて考えるトレーニングは多くありますし、人事部員が、そうしたスキルを身につけていることは珍しくありません。しかし、これと同時に、介護する社員に「共感」できるだけの経験を持っている人材は少ないと思われます。

仮に、こうした人事部員が介護を経験していたとしても、それは、特定のケースに限定されているでしょう。たとえば、実際に介護をしていても、認知症の介護を経験したことのない人が、その対応について「共感」を前提としたアドバイスするのは難しいはずです。

しかし「両立相談窓口」には、認知症のあるなし、在宅介護なのか施設介護なのかなど、様々なケースへの対応が求められるわけです。キャリアについての理解が深い人材が、さらに、幅広く様々な介護を体験するようなトレーニングが、今の日本には必要です。

お知らせ

KAIGO LAB を運用する株式会社 BOLBOP は「両立相談窓口」の育成プログラム(最低5日間から)を提供しています。育成プログラムは、本人やご家族の同意をいただいた上で、複数の介護現場(介護施設、訪問介護など)を実際に体験しながら、介護について学ぶ形式を基本としています。プバイバシーはもちろん、事故発生時の取り決め(保険加入を含む)などにも配慮をしています。興味のある経営者・人事部の方は、以下よりご連絡ください(研修スロットに限りがあるので、スケジュール組みがボトルネックになる点だけ、ご理解ください)。

 

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