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在宅勤務を分散して取得できる制度(大塚製薬)

在宅勤務を分散して取得できる制度(大塚製薬)

在宅勤務の難しさと新しい在宅勤務の形

介護をする従業員のために、在宅勤務(リモートワーク)の制度を整えている企業もあります。ただ、在宅勤務は、一般に信じられているよりも、ずっと運用が難しいものです。人事系の仕事をしている人であれば、多くの人が、在宅勤務の運用で悩んだことがあるはずです。

在宅勤務の難しさは(1)在宅ではやりにくい仕事が少なくない(2)機密情報の管理がゆるくなる(3)職場の同僚との心理的なつながりが薄れる、といったあたりにあります。特に(3)に示した、職場の同僚との心理的なつながりというのは、想像以上に、生産性に影響してしまうのです。

そうした背景がある中、大塚製薬が、新しい在宅勤務の運用を開始しています。在宅勤務と、オフィス勤務を混合させるという解決策です。以下、日本経済新聞の記事(2019年9月3日)より、一部引用します。

大塚ホールディングス傘下の大塚製薬は新たな在宅勤務制度を8月から始めた。育児や介護が必要な社員を対象に期間中に、合計1年間の在宅勤務を分散してとれる点が特徴だ。「ファミリースマイルサポート」の名称で、人事部が制度の説明を各部署へ始めた。(中略)まとめて1年間取得するのではなく、期間中に分けて取得できる。必要なタイミングで必要な期間を社員が選べるようにすることで使い勝手を高めた。(後略)

大塚製薬の狙いを予想する

大塚製薬の狙いを予想すると、大塚製薬の人事部は、過去の在宅勤務の運用で(3)に示した、職場の同僚との心理的なつながりの喪失に悩んだのだと思います。そうした悩みを解消する案として、在宅勤務とオフィス勤務の混合にたどり着いたのでしょう。

分散して取得できるとはいえ、在宅勤務の上限を合計で1年としているところにも、高度な運用から得られたノウハウの存在が感じられます。基本的には、オフィス勤務の方が望ましいという判断と、それでも、介護離職者を生んでしまうくらいなら在宅勤務を進めるべきという判断の混合なのでしょう。

可能であれば、大塚製薬には、この制度の詳細と、制度を活用して仕事と介護の両立を実現している従業員の事例研究(インタビュー調査など)を、どこかで公開してもらえたらと思います。日本中の企業の参考になると考えられるからです。

政府にも、在宅勤務を推進する企業への助成金はもちろん、こうした事例を集め、在宅勤務の運用マニュアルのようなものを作成し、企業の活動を支援してもらいたいところです。また、在宅勤務を上手に運用できる企業が増えることは、介護をしていない労働者にとっても働き方の選択肢が増える、嬉しいことだと思われます。

広がる大企業と中小企業の介護支援格差

こうした制度は、中小企業では、なかなか真似できないものでしょう。もちろん、在宅勤務が自由に選択できる中小企業もあるとは思いますが、今回の大塚製薬の事例のように(おそらくは)人事部によるしっかりとした支援ができるのは、やはり大企業に限られると思われます。

そもそも中小企業には人事部がないところも多く、仕事と介護の両立支援というテーマを扱っている担当者がいないことがほとんどでしょう。それに対して大企業では、従業員数が多いだけに介護離職者も出てしまっており、この問題の担当者がいる場合の方が多くなってきていると思われます。

ただでさえ採用難の時代に、仕事と介護の両立支援という文脈で、大企業と中小企業の介護支援格差が広がっていると考えられます。そうなると、中小企業の採用難はますます強調され、大企業でないと仕事ができないという人材も多くなっていきそうです。

とはいえ、中小企業もいつまでもうかうかしていられません。大企業の施策に遅れまいと、少しずつではあっても、介護をする従業員のための支援をしていくことになります。その意味では、こうした大企業による先進的な従業員の支援制度の拡充は、採用難という背景と合わさって、支援制度の充実競争を巻き起こしそうです。

※参考文献
・日本経済新聞, 『大塚製薬、在宅勤務を分散取得 育児や介護で計1年』, 2019年9月3日

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