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総務省統計局の資料(2018年)では、介護をしている人は627万6千人であり、そのうち、仕事をしている人(有業者)は346万3千人であるとされています。この数字が(公式な)仕事と介護の両立をしている人の数ということになるでしょう。
この346万3千人について掘り下げると、ボリュームゾーンは40〜50代です。やはり50代(50~59歳)が約136万人と多いのですが、働き盛りの40代(40〜49歳)も約67万人います。この約67万人は、子育てと介護をしているダブルケアの可能性もあり、注意が必要でしょう。
仕事と介護の両立をしている人数が急に増えるのは40歳のところです。40歳未満(15〜39歳)だと、約37万人が仕事と介護の両立をしています。これが40代になると約67万人にジャンプ・アップするのです。企業における介護研修は、40歳以上の従業員が対象となることが多いのですが、これがその理由でしょう。
日本全体の平均年齢が46〜47歳であることを考えると、日本はまさに大介護時代に突入しようとしていることがはっきりと理解できます。これから、日本全体が50代を中心とした社会になっていくので、介護の問題は拡大することはあっても縮小することは(しばらくは)ありません。
仕事をしながらの介護は負担が大きいのですが、かといって、介護離職してしまえば、金銭的にも精神的にも苦しくなります。そこで多くの人が両立を進めているわけですが、実際には、どれくらいの日数、介護に関わっているのでしょう。この介護日数についても、総務省統計局の資料は踏み込んでくれています。
正社員の男性場合、月に3日以内の介護が32.5%と最大になっています。月に3日以内なら、なんとかこなせそうです。しかし、週に6日以上という人も20.3%もいます。この週に6日以上という人は、おそらく、介護をされる人と同居しているのでしょう。
注目したいのは、正社員の女性の場合です。正社員の女性だと、週に6日以上という人が30.7%と最大になるのです。介護は女性がするものという古い価値観が、実際にはまだまだ残っていることがわかります。
非正規職員の場合は、男性でも週に6日以上が29.8%と最大になります。非正規職員の女性の場合も、週に6日以上が32.9%と最大です。男性について言うなら、介護をきっかけとして、正社員から非正規職員になるというケースもあることが予想されます。
公式にも、これだけの人数のビジネスパーソンが、仕事と介護の両立に苦しんでいるのです。実際には政府統計では捕捉されていない人も多数いるはずです。そして、この問題は、日本の高齢化と共に、どんどん大きくなっていきます。
仕事と介護の両立に苦しむ人は、仕事だけに集中できる人よりも、生産性が落ちることが推測されます。この影響がどれくらいの大きさになるのかは不明ですが、仕事と介護を両立する必要性に迫られる人が増えれば増えるほどに、日本全体の生産性が下がることになるのは明らかでしょう。
介護業界は、こうした日本全体の生産性の低下と戦っている業界でもあります。その意味において、介護保険のターゲットが利用者(要介護者)本人であるとしても、介護業界としては、そうした利用者を支える家族の負担軽減というところも、大事な注力ポイントになってきます。
課題は、介護業界が、利用者を支える家族の負担を軽減したとしても、その貢献の対価は支払われないということです。しかし現実には、介護業界の存在によって仕事に集中できる時間が増えているビジネスパーソンがいるわけですから、ここの貢献は、国家を運営する財源という視点からは、最大のインパクトがあるところなのです。
※参考文献
・総務省統計局, 『平成29年就業構造基本調査 結果の概要』, 平成30年7月13日
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