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親に介護が必要になったら、老人ホームに入ってもらいたい人が最多

親に介護が必要になったら、老人ホームに入ってもらいたい人が最多

介護を経験したことのない人の調査

アクサ生命が、介護を経験したことのない現役世代と高齢者に対するアンケート調査(サンプル数1,000名)を実施しています。その結果が、非常に興味深いので、まずは3つの重要な結果を紹介しつつ、その背景などについて、簡単に考察してみます。

1. 親の介護経験がない子世代が希望する親の介護場所は老人ホーム

親の介護経験がない(40〜50代)の子世代は、希望する親の介護場所として「介護施設(老人ホーム)」を第一位として選んでいます(全体の38.4%)。比較的安価な老人ホームである特別養護老人ホーム(特養)は30万人が入居待ちをしており、そもそも、ほとんど入居できないという事実を知らないのでしょう。また、だからと言って民間の老人ホームは、入居するために1人あたり月額25万円程度は必要です。介護施設は、富裕層にのみ可能な選択になりつつあるのです。こうした背景から、親に介護が必要になったら、親には老人ホームに入居してもらいたいという第一位の希望は、まず、実現されないでしょう。基本的には、在宅介護を覚悟する必要があります。

2. 親自身は介護場所として自宅を希望している

親世代(60〜70代)は、希望する自身の介護場所として「自身の自宅」を第一位として選んでいます(36.4%)。ただ、もし子供から「介護施設に入って」と提案された場合、ほとんどの人が、仕方ない(82.6%)と回答しています。ただ、先にも述べたような費用が支払える富裕層はそれほど多くはないため、この選択にについての実現可能性については、親子ともども、現実を認識していないことがわかります。介護を経験していない人々は、いざとなれば介護施設があると簡単に考えているという事実は、実際に在宅での介護が始まったときの典型的なショックになりそうです。

3. 子供は親の介護を自分でやるつもりだが・・・

「親の介護は誰が担うのがよいか?」という質問に対しては、子世代(40〜50代)の第一位として「自分自身」(57.2%)が選択されています。しかし、親世代(60〜70代)は、の親世代が希望する、自身の介護の担い手として「介護サービスの職員」(49.6%)、2位「配偶者」(41.2%)としていて、子供は3位(24.6%)にすぎません。ここから、子供に迷惑をかけまいとする親の心理と、恩返しがしたい子供の気持ちの間に、大きなギャップがあることがわかります。このまま、介護に突入した場合、親子の双方において、介護に関する希望が合致しないことは明らかでしょう。

典型的な介護の始まりにおける親子の心理

先に紹介した3つの結果から、典型的な介護の始まりにおける親子の心理が推測できます。(1)親子ともども老人ホームに入れると楽観視してきたが費用的に無理ということを知る(2)親は本来の希望通り自宅でプロや配偶者に介護してもらおうとする(3)子供は自分で親の介護をしようと空回りする、といったイメージです。

この調査からは、老人ホームの具体的なイメージがどうなっているのかは理解できません。しかしとにかく、それなりに資産があったり、都合よく持ち家が高値で売却できたりしない限り、一般には、老人ホームというのは、介護場所として選択することはできません。富裕層の選択だと認識しておく必要があります。

親は、もともと希望していた自宅での介護しか選択肢がないことを知ることは、それほどショックではないでしょう。しかし子供は、介護の全てを自分でやるという覚悟を勝手に決めてしまいそうです。親は、プロによる介護サービスや配偶者による介護を希望しているということまでは、知らないのでしょう。

こうして介護が始まってしまうと、親はそれなりに周囲の同世代から情報を得て、介護のプロを上手に使おうとするのに対して、子供がそこに(知識が足りていないにも関わらず)なんとか自分の手での介護を始めようとする、心理的なギャップが見えてきます。

立派になった自分の姿を見てもらいたいのかもしれないけれど

子供の立場からすれば、世話になった親の介護は、自分が立派に果たすことで、安心してもらいたいという気持ちなのでしょう。しかし、子供世代は、自分の胸に手を当てて「果たして自分は、介護について、理解しているのか」ということを、よく考える必要がありそうです。

介護の始まりにおいて、誰が直接の介護を担うのかという点について、子供は、介護のプロをライバル視すべきではありません。そもそも介護の専門性は相当に深いばかりか広く、基本的な知識を持たない素人がいきなりやれるものではありません。

自分が普段している仕事についてなら、未経験の素人にできるとは思わないはずです。それと同じか、それ以上に、介護には専門性が必要なのです。素人が、介護のプロと張り合ったところで、満足な品質の介護はできません。

子供は、もしかしたら、せめて介護くらいは、しっかりやりたいと考えるところもあるのかもしれません。ただそれは、直接、自分の手で介護をするということを目的としてはならないのです。仕事と同じように、結果が大事です。結果として、親が望むような介護が実現されることを目標にすべきでしょう。

※参考文献
・アクサ生命, 『アクサ生命、『介護に関する親と子の意識調査2019』を発表』, 2019年8月9日

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