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仕事と介護の両立を仮想体験?ユニークな体験型研修(キリン)

仕事と介護の両立を仮想体験?ユニークな体験型研修(キリン)

仕事をしながらの介護を仮想体験?

仕事と介護の両立には、職場の同僚の理解が欠かせません。しかし、親の介護は、職場の人々に同時に訪れるのではなく、短期的には運の問題で起こったり、起こらなかったりします。そうなると、仕事と介護の両立を進めることの難しさについて、職場の同僚から理解を得ることは、なかなかに難しい問題になります。

そうした中、親の介護が始まったという想定で、仕事と介護を両立することの難しさを仮想体験するという研修プログラムが話題になっています。テーマとしては、子育てとの両立の方がメインのイメージですが、とにかくユニークです。以下、NEWSポストセブンの記事(2019年8月9日)より、一部引用します。

総務省の調査では、今年6月の女性の就業者は3000万人を突破した(※総務省が7月30日に発表した2019年6月の労働力調査)。(中略)その一方で女性には育児や介護の負担もある。子供の発熱などで早退する女性社員への風当たりが強い職場は多く、働く機会をもらっても働きづらいというのが現状だ。

そんななか、斬新な研修を導入した会社がある。それがキリンホールディングスだ。「当社の営業担当には、仕事と家庭を両立している女性が少ない状況でした。そんななか、営業担当の女性5人が、母親になっても働けるかどうかシミュレートしてみようと、『なりキリンママ・パパ』研修を発案したのです」(キリンホールディングス人事総務部)

この研修は1か月間、小さな子供がいる親や介護者など、時間に制約のある立場で働いてもらうというもので、全事業所での展開を進めている。どんなに忙しくても定時には帰らないとならず、どうしても緊急で残業をしないとならない場合は、ベビーシッターに子供を預けるという設定で、ベビーシッター代を支払う仮想体験をする。(後略)

体験型研修の可能性と限界

可能であれば、同じような研修を、できるだけ多くのビジネスパーソンに受けてもらいたいところです。同時に、全従業員が、こうした体験型研修を受けるのは、コスト面からも、1ヵ月という期間の面からも現実的とは言えません。

とはいえ、この研修の効果測定結果を見るまでもなく、この研修に意味があることも明らかでしょう。そうなると、こうした体験型研修を、どれだけ低コストに、どれだけ短期間のうちに提供できるかという話になってきそうです。

こうした研修を受けている人が増えれば、介護に対する準備が進むだけでなく、介護業界のイメージも大きく変わるはずです。当然、介護業界の存在意義が、実感をともなって正しく理解されるでしょう。また、介護業界に興味を持つ人も増えるでしょう。

そうして、介護業界の外にいる多くのビジネスパーソンが介護についての理解を深めていくことは、日本にとって最後の成長産業とも言われる介護産業の発展にとっても意味があります。介護業界への異業種からの新規参入が増えることで、介護業界の活性化にもつながるからです。

『ヘルプマン!』も研修の一部として読まれてほしい

介護をテーマとした漫画『ヘルプマン!』は、介護業界で働く人であれば、知らない人はいないほど、広く読まれている名著です。少なからぬ介護業界の人は、この漫画が、より広く一般の人々にも読まれることを望んでいます。それによって、介護業界の現状と苦悩が理解されるからです。

今回、紹介したような研修を受ければ、多くのビジネスパーソンが介護に関心を持つようになります。そうした体験を前提として、この漫画を読めば、想像以上に大きな効果があると思います。少なくとも、こうした研修を企画する人事担当者だけでも、この漫画は読んでいてもらいたいです。

介護を体験したことがない人が、少しでも、介護に対する正しいイメージを形成していくことは、今後の日本にとって重要なことです。いずれは、介護をVRで体験する機会や、介護をテーマとしたドラマなどが増えてくることで、さらに、一般の介護に対する認識は高まっていくことが理想です。

とにかく、今の日本には、一般の人々がイメージできる介護のコンテンツが少なすぎるという問題があります。このような研修は、そうした中で、一般の人々が体験できる介護のコンテンツとして、大きな可能性があります。この流れが、日本全体に広がっていくことに期待したいです。

※参考文献
・NEWSポストセブン, 『16:00働き方改革、キリンは親や介護者の気持ちを体験する研修を導入』, 2019年8月9日

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