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仕事と介護の両立支援は、少しずつ進んでいるけれど・・・

仕事と介護の両立支援は、少しずつ進んでいるけれど・・・

2015年と2017年の調査結果の比較

MS&ADインターリスク総研による大規模な企業調査の結果があります(MS&ADインターリスク総研, 2018年3月)。この調査結果で特に興味深いのは、この大規模調査は、2015年と2017年の2回行われており、その2回の結果が比較できるようになっているところです。今後の定点観測にも、大いに期待が集まっています。

そうした比較の結果として、少し嬉しい分析があります。それは、企業による介護に苦しむ従業員の支援が、少しずつではあっても、前進しているという事実です。現時点の支援で十分ということはなく、理想からは程遠いものの、この歩みには確かなものを感じます。日本の企業は、問題を問題として把握しているのです。

ここで、こうして企業の取り組みを紹介することは、従業員の支援に遅れている企業を刺激する効果もあるでしょう。そうしたことも考え、今回は、企業による仕事と介護の両立支援について、2015年と2017年の比較として紹介してみます。

仕事と介護の両立支援制度の中身を比較してみる

仕事と介護の両立支援においては、いくつか、よく知られている支援があります。そうした支援を、2015年と2017年で比較してみると、それぞれに、少しずつ前進がみられます。まず「介護休業の期間について、法定以上の制度を整備している」という企業は、2015年の38.8%から、2017年の49.4%まで、10ポイント以上改善しています。

これと同様に「短時間勤務について、法定以上の制度整備をしている」企業は、2015年の37.0%から、2017年の48.1%に改善しています。また「介護休業の対象者について、法定以上の制度整備をしている」という企業も、2015年の36.6%から、2017年の46.1%までになっています。

まだまだこれからというのは「介護に関わる相談窓口の設置など」という対応ですが、これも2015年の11.7%から、2017年の15.3%にまでなりました。介護は、それぞれに個別性が高いので、ただ、休みを与えればそれで良いというものではありません。こうした相談窓口の設置を通して、個別に手厚い支援を与えていく必要があります。

企業が従業員の介護を支援するという覚悟の表明

ここで少し気になる比較があります。それは「仕事と介護の両立を企業が支援するという方針の周知」です。2015年には10.5%でしたが、2017年にも11.6%と、あまり改善がみられません。企業も、具体的な支援のために、どれだけのコストが発生するのかがわからず、覚悟の表明ができないでいるのでしょう。

また、そうした消極的な姿勢からか「仕事と介護の両立支援制度の周知」についても、2015年の26.4%から、2017年の27.7%と伸び率がよくないです。「この企業は、従業員の介護支援に本気で取り組みます、そして、その支援制度の具体的な中身は、こうなっています」ということが(ほとんど)なされていないということです。

そうした覚悟の表明や支援制度の周知ができていないにせよ、とりあえず、誰もが公的な介護保険制度についての理解をする必要があります。しかし「セミナーなどで公的な介護保険制度の周知をしている」という企業は、2015年で7.6%、2017年で7.5%と、むしろ減っています。

公的な介護保険制度について理解することは、誰にとっても必要なことです。特に、40歳以上の従業員は、給与天引きで、介護保険料を支払っているはずです。こうして支払っている介護保険料が、将来の自分に、どのような影響をもたらすのかについて説明がないということは、少し異常とさえ言えます。

企業による仕事と介護の両立支援は、確実に進んではいます。しかし、その内容は、まだまだ「休みやすい環境の整備」に止まっているのが現実のようです。本来であれば、仕事をできるだけ休まずに介護ができるように支援することが大事なのですが、その領域に到達できている企業は、まだ少数であることがわかる調査結果です。

※参考文献
・MS&ADインターリスク総研, 『第2回 仕事と介護の両立に関する企業実態調査 報告書』, 2018年3月

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