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仕事と介護の両立に関する大規模調査(MS&ADインターリスク総研)

仕事と介護の両立に関する大規模調査(MS&ADインターリスク総研)

MS&ADインターリスク総研による大規模調査

MS&ADインターリスク総研が、介護離職に対する企業の取り組みについて、大規模調査の結果をレポートしています(MS&ADインターリスク総研, 2018年)。有効回収数は777社であり、回収率は6.2%と決して高くはありませんが、それでも十分に大規模な調査と言えるものであり、参考になります。

MS&ADインターリスク総研は、三井住友海上火災保険株式会社など5つのグループ保険会社が中心となって出資している会社で、保険会社が必要とする基礎的なリサーチを行なっているようです。リスクを洗い出し、そうしたリスクへの対応をそリューションとして整えて販売することを目指しているとのことです。

このMS&ADインターリスク総研によるレポートは、2018年3月のもので、2回目となります。ですので、この2018年3月のものは、その前の発表とのデータ比較ができるようになっており、非常にためになります。今回は、このMS&ADインターリスク総研によるレポートから、いくつか、知っておきたいことをピックアップします。

大企業ほど介護離職を経験している

有効回答を得た777社のうち、介護離職者が出てしまった企業は、全体の14.0%になっています。ここで注意したいのは、従業員数が300名以上の大企業に限定すると、この数字は35.0%にまで膨れ上がるという点です。とはいえ、従業員数が多ければ、それだけ、介護離職が出やすいのは容易に想像ができます。同時に、危機意識という意味では、中小企業よりも大企業のほうが、実際の介護離職を経験している分だけ、大きいとも言えそうです。

介護離職をするのは50代とは限らない

一般に、介護離職をするのは40〜50代と認識されているように思います。しかし実際のデータを見ると、介護離職は40〜50代のみならず、30代はもちろん、20代でも無視できない規模で発生していることがわかります。男性の介護離職者に限れば、20〜30代が全体の介護離職者の約38%を占めています。未婚者の場合、介護の負担を夫婦で分散させることができないので、介護離職に繋がりやすいのかもしれません。

介護離職の理由トップ3

介護離職の理由トップ3は「働きながら介護を行うことが負担と本人が感じていたため(65.1%)」、「介護すべき対象者が遠方に居住しているため(40.4%)」、「職場に迷惑をかけると本人が感じていたため(21.1%)」となっていました。個別には、両親が同時に介護が必要になったり、介護にかかるお金のためにより高給が得られる仕事に転職していたり、親から「帰ってきて欲しい」と言われたりといったことが、介護離職の理由になっていました。

介護離職は企業にとって痛いことなのか

介護離職をされてしまうと、企業にとって痛いことなのでしょうか。介護離職の事業への影響に関する項目では「とても大きい」「大きい」を足して79.2%となっていました。これは企業規模が大企業なのか中小企業なのかに依存せず、どのようなサイズの企業であっても、介護離職は事業への影響が大きいという点でそろっていました。また、当たり前ですが、経営層に近いところで働く人(経営者や管理職)が介護離職をすると影響が大きいと考えられていました。

介護離職防止に関する取り組み

介護離職防止は、企業にとって「超長期的に解決すべき課題(63.2%)」と考えられています。しかし「最優先の課題」「優先的に取り組むべき」という企業も、22.0%になっています。これは、過去の調査(2015年度)には11.5%だったので、ほぼ2倍になっていることがわかりました。企業は、基本的には、介護離職の問題を「中長期的に」考えていますが、その危機感は高まってきていると言えるでしょう。

介護離職防止への企業の取り組み

介護離職防止に対して「十分な取り組みが実施できている」と回答したのは、わずか1.4%でした。しかし「一定取り組みが進んでいる」という企業は31.0%あります。これらに「取り組みの検討段階である」を足すと、63.0%の企業は、現在進行形で、介護離職防止に対して、動いていることがわかります。ただ、従業員の仕事と介護の両立支援に関する実態把握をしているのは7.2%にすぎず、今後実施予定という13.3%と足しても、20.5%程度にしかなりません。

この調査から見えてくること

介護離職は、それほど年齢層に関係なく発生してきており、特に大企業は、それを経験しているということです。そして介護離職は、企業の事業に悪影響を与えることがわかっており、企業は、なんらかの介護離職防止の対策を打ち出そうとしています。

ただ、そもそも従業員の実態把握ができているのは1割にも満たないわけですか。その場合、介護離職防止の対策は、せいぜいが、法廷の介護休業への準拠を基本とした制度整備に止まっていることが予想されます。

しかし、介護は、それぞれに個別性の高いものであり、負担の原因となることは一様ではありません。それぞれに異なる両立支援ニーズに対して、どれだけきめの細かい両立支援ができるかどうかが鍵になるでしょう。そうした、より高度な支援制度が整備される必要がありますが、企業の対応は遅れているとしか言えません。

※参考文献
・MS&ADインターリスク総研, 『第2回 仕事と介護の両立に関する企業実態調査 報告書』, 2018年3月

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