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ソフトバンクのショートタイム・テレワーク

ソフトバンクのショートタイム・テレワーク

ソフトバンクの取り組み

従業員の仕事と介護の両立に向けて、先進的な企業と、そうでない企業の格差が出てきています。そうした先進的な企業のひとつに、ソフトバンクが含まれます。ソフトバンクの場合、法定の日数を上回る介護休業、時短やスーパーフレックス、新幹線通勤など、制度面ではこれ以上ないほどに充実しています。

人材の採用がますます困難になる中、既存の従業員に安心して働いてもらう必要性が増しています。そうした環境において、採用広報にばかりお金をかける企業と、仕事と介護の両立支援にもお金をかける企業のどちらが、長期的に勝っていくことになるかは明白です。

本来の、家族主義的な日本的経営であれば、こうしたソフトバンクの施策のようなことは、当然の対応でもあります。しかし、そうした日本的経営の良いところを削除し、年功序列などの悪いところだけを維持している企業が増えてしまっているように見えるのは、とても残念なことです。

ソフトバンク、新たな取り組み

ソフトバンクは、さらに、仕事と介護の両立支援を打ち出しています。今回の施策は、既存の従業員にとっても嬉しいものになりますが、同時に、新規採用の戦略になっている点で、注目に値します。以下、ITmedia NEWSの記事(2018年12月13日)より、一部引用します。

ソフトバンクは12月13日、介護や育児、身体の障害などで長時間の勤務が難しい人に、業務の一部をテレワークで委託する「ショートタイムテレワーク」の実証実験を2018年度内に始めると発表した。長時間勤務が難しい人の雇用機会創出が狙い。(中略)

参加者の勤務は1日4時間、週に2、3日程度を想定。介護や育児によって「働きたくても遠い職場には通えない」「自分が得意な仕事を選べない」といった人でも、自宅や近場で自身のスキルを生かして働ける場の提供を目指す。(後略)

他社を介護離職する人材を狙う

今回のソフトバンクの狙いは、1日4時間、週に2、3日程度、自宅で働きたい人をターゲットにしています。これは、他社を介護離職する人材をターゲットにしていることは明白でしょう。介護だけでなく、育児中の人にとっても魅力的な話です。

これを実現するには、社内から、細切れの時間でもこなせる仕事を切り出すという膨大な作業が必要になります。いわゆるBPR(Business Process Re-engineering)と呼ばれるものですが、これを社内だけでしっかりやれる会社は多くはありません。

ショートタイム・テレワークの実現は、その会社に、高い経営力があってはじめてやれることです。その意味では、株主からしても、こうした制度を導入できる企業かどうかは、注視されるはずです。仕事と介護の両立は、いよいよ、経営の中心課題になってきています。

次の一歩として検討してもらいたいこと

ソフトバンクのように先進的な企業には、次の両立支援への一歩として、介護業界の支援を検討してもらいたいです。介護業界は、枯渇する財源と、急増する要介護者に苦しんでいます。しかし、介護業界が充実していかないと、従業員の介護負担は減っていかないのです。

介護業界は、ともすれば、税金を使うばかりで、新たな価値の創造には貢献していないように見られることもあります。しかしそれは間違いです。介護業界があればこそ、直接的に、新たな価値を創造する仕事をしている人々の時間が捻出されているのですから。

その意味において、介護業界の真のKPIは、仕事と介護の両立に苦しむ現役世代ために捻出した労働時間ということになります。もちろん、要介護者のQOL向上も大事なことですが、経済的にみても、介護業界は、労働時間の適材適所を実現する、非常に意義深い仕事をしているのです。

※参考文献
・ITmedia NEWS, 『遠隔地で介護や育児と両立できる「ショートタイムテレワーク」 ソフトバンクが実験』, 2018年12月13日

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