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大企業が従業員の介護問題に本腰を入れはじめています。まず、従業員が、親の介護を理由に離職してしまうのは、大きな損失だからです。それだけでなく、親の介護に不安があるまま仕事をしたとしても、生産性が上がらないということも問題になっています。
そうした中、サントリーが、一歩先を行く従業員の介護支援に乗り出しているようです。こうした大企業の事例が増えてくれば、日本全体が変わっていく可能性もあり、期待が膨らみます。まずは以下、時事通信の記事(2018年7月23日)より、一部引用します。
「介護の問題が社員に不安をもたらし、生産性が落ちている」と指摘するのは、サントリーホールディングスの新浪剛史社長(59)。同社では家族の介護のために毎年10人程度の社員が離職している。遠隔地に住む高齢の親が心配で仕事が手に付かなくなる事態を減らそうと、社員やその配偶者の両親がオンラインで診療を受けられる制度を10月に導入する。(後略)
このサントリーの事例では、介護離職を問題視しているだけでなく、介護が従業員に対して不安をもたらし、それが生産性に影響を与えるというところが新しい考え方になっています。介護離職が問題なのは当然として、仮に離職しなくても、介護の負担や不安があること事態が問題であり、そこにチャレンジしようとしているのです。
昨年10月に発表された調査結果(オリックスリビング, 2017年)によれば、家族の介護について不安に思っている人は84.3%にもなりました(「不安を感じる」が36.6%、「やや不安を感じる」が47.7%)。こうした不安を抱えながら仕事をすると、集中力が失われ、仕事の生産性に影響するのは当然のことでしょう。
ただ、難しいのは、こうした介護への不安が、仕事の生産性に対してどれくらい影響するのかということを科学的に示すことは簡単ではないという部分です。しかし、こうした科学的な調査結果が出てくるのを待っていると、問題がさらに大きくなる可能性もあります。だからこそ、経営者による決断が必要なのです。
今回のサントリーの発表は、そうした意味で、他の企業の経営者にも良い刺激となる英断ではないでしょうか。このようなリーダーシップが、日本全体を変化させていくものと信じています。ぜひ、経営者は、従業員の介護問題を真剣にとらえ、具体的な対策として打ち出していってもらいたいです。
※参考文献
・時事通信, 『介護は生産性の問題=サントリーホールディングスの新浪剛史社長』, 2018年7月23日
・オリックスリビング, 『第10回「介護に関する意識調査」を実施』, 2017年10月30日
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