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今月、昨年2017年度の介護離職者の数が発表されました。結果として、ここ数年来と同様に約10万人というのは変わりませんでした。ここはともかくとして、今現在、仕事と介護の両立をしている人が約300万人もいるという部分が気になります。以下、朝日新聞の記事(2018年7月14日)より、一部引用します。
家族の介護や看護のために仕事を辞める「介護離職」が年9万9100人に上ることが13日、総務省の2017年の就業構造基本調査で分かった。安倍政権は20年代初頭までの「介護離職ゼロ」を掲げて施設整備などを進めているが、前回12年調査の10万1100人からほとんど減らず、深刻な状況が続いている。(中略)
男女別では女性が7万5100人で8割近くを占め、男性は2万4千人だった。12年調査と比べると、女性が6100人減る一方で、男性は4100人増えた。(中略)会社などに勤めながら介護をしている人は、約300万人だった。このうち3割近くの人が、週6日以上とほぼ毎日、介護をしていた。(後略)
介護離職者として、男性が増えているというところも、大事な指摘でしょう。長男の嫁が介護を担ってきた過去とは異なり、現代という時代の介護は、男性であっても、子供が直接担うという部分に特徴があります。すでに、義理の両親を介護する嫁は、両親の介護をする息子よりも少なくなっています(NHKクローズアップ現代+, 2018年)。
もちろん、まずは、介護を理由に仕事をやめることになってしまった介護離職者のフォローが必要です。同時に、現時点で仕事と介護を(なんとか)両立させている約300万人のビジネスパーソンのことが気になります。この約300万人の中には、本当にギリギリの状態の人と、余裕のある人が混在しているからです。
本当にギリギリの状態にある人は、近い将来、介護離職者になってしまう可能性があります。ここの人数によっては、今後、介護離職者は激増する可能性もあるわけです。同時に、いまの約300万人という数字は、今後(しばらくは)増えることはあっても、減ることはないという点にも注意が必要でしょう。
また、自分が介護をしていることを周囲には伝えていない、いわゆる「隠れ介護」という人々が、この約300万人に反映されているのかというと、疑問もあります。日経ビジネスの2014年9月号は、その表紙で『隠れ介護1300万人の激震』と強調しました。約300万人という数字は、ここからすれば、少なすぎることになります。
これが果たして、どれほど大きな社会問題なのか、正しく把握できないと、対策も打ち出せません。正しく把握するには、どうしても、きちんとした統計調査が必要になります。仕事と介護を両立していると言っても、その中身は、本当に多様になっているはずだからです。
現時点でわかっているのは、こうした、仕事と介護の両立に関する実態調査を行っている企業は2割程度にとどまるということです。これで、実態調査として十分なはずもありませんし、その中身がきちんと公開されていないことには不安も感じます。なんとか、ここの部分の調査を進めてもらいたいところです。
介護離職ゼロという言葉だけが一人歩きしてしまっている現状に、大きな危機感を覚えます。それは、実質的には不可能なことです。そうした不可能なことを目標とするよりも、現実を見て、毎年どういうペースで介護離職者を減らしていくのかといった目標が必要ではないでしょうか。
※参考文献
・朝日新聞, 『介護離職、年9万9千人 働きながら介護は300万人』, 2018年7月14日
・NHKクローズアップ現代+, 『”息子介護”の希望をさがして』, 2018年7月3日
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