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在宅介護をしていて、急な出張などで、どうしても要介護者を自宅に一人にしなければならないケースもあります。そうしたとき頼りになるのが、短期的に要介護者を宿泊させてくれる「ショートステイ」や「お泊まりデイ」と言われる介護サービスです。これらは、介護に疲れていて休みたいとき(レスパイト)にも使えます。
このうち「ショートステイ」は、介護保険内の介護サービスであり、お得です。ただ、一般には事前の予約が必要であり、旅行など、先に計画が立っている場合の利用に向いています。これに対して「お泊まりデイ」は、介護保険の適用外なのですが、急な出張といったケースにも対応してもらえることが多いのです。
仕事と介護の両立にとって、どちらも重要です。ただ、仕事をしながらの介護という意味で、どちらかと言えば、急なケースに対応してもらえる「お泊まりデイ」の存在は、本当に助かるものです。これが、介護保険内になってくれたら、介護離職は減らせるとおも思います。
しかし、困ったことに「お泊まりデイ」には廃業が相次いでいるのです。背景にあるのは消防法令の改正で、スプリンクラーの設置義務です。以下、NHK NEWS WEBの記事(2018年3月31日)より、一部引用します。
介護が必要な高齢者が日中に通うデイサービスの施設に一時的に宿泊できるサービスは「お泊まりデイ」と呼ばれ、介護する家族が病気になったり急用ができたりした際の夜間の受け入れ先として都市部を中心に多くの施設で提供されています。
5年前に長崎市のグループホームで起きた火災をきっかけに消防法令が改正され、自力での避難が難しい人が入居したり宿泊したりする介護施設は新年度から規模にかかわらず、スプリンクラーの設置が原則、義務づけられました。
しかし、スプリンクラーが設置できないという理由で、「お泊まりデイ」を取りやめざるを得ない施設が相次いでいて、NHKが東京23区に取材したところ少なくとも31の施設にのぼることがわかりました。(中略)スプリンクラーを理由に1割を超える施設がサービスをやめたことになります。
デイサービスによっては「お泊まりデイ」の収益が、他の事業の赤字を補填していたところもあります。これを機に、介護事業から撤退するところもあるでしょう。今回の法改正に限った話ではないのですが、こうした現場を見て、法改正がなされているのか、大いに疑問です。
法改正に関わる人が「お泊まりデイ」を実際に使っていたら、こうした強引な対応はないと考えられます。もちろん、火災による死亡事故があるのはダメなことですし、スプリンクラーの設置についても、大事なことでしょう。ただ同時に、介護をしている家族からすれば「お泊まりデイ」がまさに命綱というケースも少なからずあります。
内閣府の資料によれば、仕事と介護の両立促進のために必要な地域や社会による支援として、トップに僅差で2位となっているのが「「緊急時に対応できるショートステイの拡大」です。実際には「ショートステイ」は緊急時には空いていないケースもあるため「お泊まりデイ」の重要性がここからもわかります。
スプリンクラー設置の補助金もあるようですが、実際にはまったく足りていないようです。在宅介護にとって「お泊まりデイ」とは、実質的に、プチ施設介護であり、こうした中間的な介護サービスこそ、本当は重要なのです。なんとか、補助金を増額するなど、別の対応が求められます。
※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『介護施設宿泊サービス廃止相次ぐ』, 2018年3月31日
・内閣府, 『仕事と介護の両立に関するデータ』
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