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不都合な真実;企業に介護がバレると損をする(カミングアウトを考える)

介護の不都合な真実

不都合な真実;介護のカミングアウトは損なのか?

管理職が、仕事と介護の両立支援制度を使ったら、長期的な昇進・昇格に影響するのでしょうか?この、とてもセンシティブな問いへの回答は「Yes」です。ここは、法定の介護休業の利用が、5%を下回っている理由の背景でもあるでしょう。

上のデータは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる調査結果(2013年3月)です。ここから、直接的に影響すると回答している企業は14%(「影響する」3.7%と「やや影響する」10.3%の和)にすぎません。しかし、最も気になるのは「わからない」が33.6%もいるということでしょう。

この「わからない」を加えると、47.6%もの企業において、両立支援制度を利用するのは、昇進・昇格にとって不利ということになります。これは、仕事と介護の両立を目指しているビジネスパーソンにとって、かなり恐ろしい事実でしょう。

「わからない」という立場は何を意味するのか

ここからは、完全な推測になります。KAIGO LAB編集部には人事担当の役員経験者や人事コンサルタントがいます。そこで、編集部でも話し合ってみました。その結果として「わからない」という回答をした企業の気持ちも少しわかるという意見が出ました。

人事としては、高い業績を出した人材を昇進・昇格の対象としていくことは当然です。もちろん、できるだけ公平に業績を測定した上での話です。このとき「高い業績を出す」ということと「介護をしながら仕事をしている」ということの間の相関関係については、なんとも言えないというのが正直なところです。

もちろん、介護をしながらも、高い業績を出す人材もいるでしょう。そうした人材の場合は、昇進・昇格への影響はありません。しかし、介護が厳しすぎて、業績に影響が出るケースもあるでしょう。この場合は、昇進・昇格への影響はあるとしか言えません。つまり、本当に「わからない」のです。

真の問題はどこにあるのか;企業文化を変える必要性

「家族の記念日にも、有給をとらない」というのが、日本のビジネスパーソンの主流でしょう。そうした環境の中で、介護があるからという理由で有給を取得すれば、周囲は「あいつだけ、なんで有給を取るんだ?」という反応になります。不公平だと思われるわけです。

本当は、有給を取得するのは当然の権利です。にもかかわらず、実際は有給を取得することは、昇進・昇格をあきらめることに近い話になっているのです。この、マッチョすぎる日本のビジネス文化は、介護のみならず、子育てについても、女性の活用についても、そして従業員の本当の幸せにとってもマイナスです。

再確認したいのは、誰もが、定年までには、親の介護がはじまるということです。それなのに、その事実をカミングアウトするだけで、昇進・昇格が不利になるなんて、明らかにおかしいことです。しかし、人事としては、公平に判断する必要があります。

この状況を変えるためには、みんなが、必要に応じて、有給をきちんと使うという企業文化を築く必要があるということです。有給を取得しても、時短勤務でも、ちゃんと業績が出せる環境を整備する必要があるのです。そういう企業でないと、長期的には勤務することができません。

「ワークライフバランス(WLB)」といったりしますが、それは、「もっと人生を楽しもうよ」というレベルの話ではありません。企業として生き残るための唯一の手段ですし、社会が継続・発展していくための基礎でもあるわけです。

※参考文献
・三菱UFJリサーチ&コンサルティング, 『平成24年度両立支援ベストプラクティス普及事業(仕事と介護の両立に関する企業調査)』(厚生労働省委託事業), 2013年3月

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