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厚生労働省(労働基準局監督課)は、日本の企業に対して『モデル就業規則』を提示し、実質的に日本の労働環境に大きな影響を与えてきました。この中の第11条(遵守事項)には、労働者が守るべきこととして「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」が挙げられています。
労働者がこれを守らない場合は、懲戒の対象となることも、この『モデル就業規則』には示されています(第62条)。もちろん、それでも許可があれば「他の会社等の業務」に従事することは可能でした。とはいえ、こうして罰則まで整備されている中で、副業を進める人は、多くはなかったはずです。
しかし厚生労働省では、いま、こうした副業禁止に関する記述を見直し、副業を容認する方向への改定を検討しているというのです。以下、Business Insider Japan の記事(2017年11月8日)より、一部引用します(改行位置のみ、KAIGO LABにて修正)。
政府が副業容認に転じる背景には、急速に進む少子高齢化による労働力不足への危機感がある。人口減少時代を迎え、企業サイドでは優秀な人材の獲得・流出防止や人手不足対策につなげたい考えだ。(中略)
しかし現状、8割以上の企業が副業を禁止する根拠の一つには、厚生労働省が策定する「モデル就業規則」の存在がある。ここでは原則的に、副業禁止が明示されているのだ。厚労省の検討会では、この副業禁止の記述を見直し「原則的に副業・兼業を容認」の内容へ改定する方向。(後略)
好景気と労働力人口の減少を受けて、どこの業界も人手不足が深刻化しています。そうした環境は「パートタイムでもいいから、働いて欲しい」と考える企業を増やしていくでしょう。そうなると、伸び悩む給与に満足しない労働者の中には、副業をはじめる人も出てくるはずです。
そうして、徐々にではあっても、あらゆる職場に、パートタイムで働く人が増えていくでしょう。それが当たり前の環境が整えば、現在はフルタイムで働いている労働者の中には、逆に、給与は下がってもいいから、パートタイムになりたいと考える人も出てきます。
さらに、最近では、週休3日制を導入する企業も増えてきています。こうして、柔軟な働き方が、本格的に日本に広がっていくことになります。日本の社会は、まさに今、大きく変化しようとしているのです。
介護業界の待遇(40際モデル賃金)は、全63業界中でもダントツの最下位にあることは、これまでなんども述べてきました。それでも、介護業界で頑張る人がいるのは、介護の仕事には魅力もあるからです。
それでも、子供が生まれたりしたことをきっかけに、よりよい待遇が必要になり、介護業界を離れる人は後を絶ちません。しかし今後、副業が可能になれば、パートタイムで介護業界に残りながら、好待遇の別の仕事を掛け持ちするという人も出てくるはずです。
はじめは、それも少数に限られるでしょう。しかし、そうして介護業界の外で働く介護職は、他の業界で働く人に、介護業界の魅力を伝えることにもなると思われます。すると今度は、そうした他の業界からも、パートタイムではあっても、介護業界で働いてみたいという人も出てきます。
この流れは、はじめは、小川のようなものでしょう。これだけで、介護業界の人材不足が解決することもありません。しかし少なくとも、この流れは(ある程度までは)大きくなっていくものであり、人材不足となる日本においては(人工知能が人間から仕事を奪うまでは)止められないはずです。
※参考文献
・Business Insider Japan, 『政府が年度内に副業解禁へ——長時間労働不安、社会保険はどうなる?』, 2017年11月8日
・厚生労働省, 『モデル就業規則』, 2016年3月
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