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【重要】介護のための退職(介護離職)はリスクが高い?決意する前に検討すべきこと

介護を理由とした退職

退職したら負担は増すし、再就職も困難!

介護を理由に退職すると、精神的・肉体的・経済的な「負担はかえって増える(介護退職者の約70%の回答)」という調査結果があります。また、再就職までにかかっている期間は、最も多いのが「1年以上(男性の38.5%、女性の52.2%)」というデータもあります。

仕事と介護の両立が難しいと考え、負担を少なくしたいと思って退職しようとしているなら、まず、待っていただきたいです。また、再就職が簡単だと思っているなら、これもまた待っていただきたいのです。介護のための退職は、実際に、相当、リスクの高い選択です。最も危険なケースは、

(第1段階)再就職先が決まっていないまま退職
(第2段階)想定以上に入院費や医療費がかさむ
(第3段階)経済的に苦しくなり、介護サービスを受けるためのお金がなくなる
(第4段階)介護サービスを受けられないため、自分が介護対応するしかなくなる
(第5段階)時間的余裕がなくなり、再就職の選択肢がせばまる
(第6段階)第3段階に戻る;以降、負のループに入る

というものだと思われます。結果として、精神的・肉体的・経済的な負担が増すというわけです。この負のループに入ってしまうと、そこから抜け出すのはとても大変です。

退職を決めるまえに、検討すべきこと

まず、今の職場には、法律で定められた「介護休業」というものがあるはずです(約9割の企業が整備中または整備済)。人事部や総務部に相談してみてください。ただ、上司はもちろん、人事部や総務部も「介護休業」の運用に慣れていないことが多いので、そこは説明に苦労するかもしれません。

「介護休業」と「有給休暇」を上手に組み合わせて介護に対応しながら、ケアマネに「現職を維持しながら介護をするには、どのようなケアプランが必要か」を相談しましょう。

その上で、自分が介護のために割かなければならない時間を(難しくても)明らかにします。結果として、時短勤務やフレックスなどを利用しなければならなくなるかもしれません。そうしたケースは、上司、人事部や総務部にとってもはじめての経験かもしれません。

しかし、これから、介護と仕事を両立しなければならない人は劇的に増えます。ですから、人事部や総務部も、それにあわせて制度を作ってくれる可能性もあります。それでもダメであれば、介護のために、そうした制度のある会社に転職する必要がでてくるかもしれません。しかし、その場合も、できるだけ現職は辞めずに、その条件での転職先が決まってから、現職を離れるようにする必要があります。

経営者、人事部や総務部のみなさまへ(2025年問題に関して)

75歳を超えると、介護が必要になる高齢者が劇的に増えます(70〜74歳では6.2%なのが、75〜79歳では14%、80〜84歳では29.6%)。団塊世代が75歳を迎えるのは、2020〜2025年ごろからです。ですから、あと数年で、団塊世代の親を持つ、団塊ジュニア世代の介護対応がはじまる可能性が急速に高まるわけです。

団塊ジュニア世代は、今、御社においてベテラン/管理職の地位にあるはずです。しかも、その人数は、全社員の中でも最も多い層になるのではないでしょうか。この層が、介護を理由に御社を退職すると、大問題です。さらに、こうした退職者は、介護と仕事の両立がしやすい競合に転職する可能性も高いでしょう。

団塊ジュニア世代は、これまでの介護世代(主に50代)と比べて、兄弟姉妹が少なく、未婚率も高く、結婚していても共働きが多いのです。つまり、1人あたりの介護の負担が大きく、団塊ジュニア世代は、介護問題に直面したとき、職場の支援がなければ、これまでの世代よりもずっと退職しやすい状況にあります。

早急に、従業員の介護問題への対応が求められます。佐藤博樹教授(東京大学)の提言によれば(1)事前の心構えや準備のための情報提供;本人40歳、本人50歳、親65歳の時点で実施するべき(2)従業員が介護の課題に直面した時点;相談できる環境整備、介護を理由とした離職のリスクの説明、仕事との両立の重要性の喚起、柔軟な働き方の整備などが必要になるそうです。

ぜひ、ご検討ください。

※参考文献
・三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社, 『仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査』, 平成24年度厚生労働省委託調査結果概要
・佐藤博樹, 『社員の仕事と介護の両立をどのように支援すべきか 社員が自分一人で介護を抱え込まないために』, 内閣府資料(2012年6月)
・公益財団法人生命保険文化センター, 『介護や支援が必要な人の割合はどれくらい?』

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