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いまだに「介護は女性がする」と考えている男性のみなさまへ

いまだに「介護は女性がする」と考えている男性のみなさまへ

男性が仕事をしながら親の介護をする時代に

超高齢化社会を迎えている日本では、介護をめぐる環境が大きく変化しています。その中で、現役世代にとって最も大きな変化と言えるのは「何人の働き手が1人の高齢者を支えるのか」というものです。

高齢者世代の人口と、現役世代の人口の比率を見てみると、この変化がよくわかります。1970年には、高齢者1人を、ほぼ10人の現役世代で支えてきました。これが、2020年には高齢者1人を、2人の現役世代で支える時代になるのです。そして2050年には、高齢者1人を、ほぼ1人の現役世代で支えなければならなくなります。

過去の日本における親の介護は、その大部分を専業主婦が担ってきました。しかし時代は変わり、女性も働くようになり、未婚率も上昇したという背景から、家族の中で介護の担い手になれる人が減っています。さらに、今の現役世代の場合は、介護の負担を分散できる兄弟姉妹も少ないという特徴もあります。

これは「仕事をしながら、親の介護をする男性」という、これまでの日本では(あまり)見られなかった人々の登場につながります。ある日突然、自分の親が、誰かの助けがないと生きていけない状態になります。そのとき、家族の中で、自分しかその対応ができないという男性が増えていくのです。

男性が介護をするということ

もちろん、介護に関わるのは、男性だけではありません。しかし、介護の現場で話を聞いていると、女性が介護に関わるときとは異なる難しさが、男性の場合はあるということが見えてきます。あくまでも印象論ですが、そもそも、介護を通して精神的に厳しい状態になりやすいのは男性に多いようなのです。

女性の場合は、介護をしている母親の姿を見ているからか、いつか自分も、そんな母親の介護をするのだという自覚があるからかもしれません。逆に男性は、仕事に打ち込む父親と、介護をする母親を見ているので、自分が親の介護をするのだという自覚が育まれていないように思われます。

いざ、男性が介護の世界に放り込まれると、まず、オムツ替えと入浴の世話で深く傷つく傾向もあるようです。子育てをしていれば、こうしたことにもある程度の耐性ができているものですが、日本の男性の多くは、子育てに参加してこなかったからかもしれません。現場の経験としては、男性はそもそも、他者の身体に触れること自体を苦手としていることも多いようです。

また、男性にとって、誰かに相談するということは、自分の無能をさらしているような気がして、苦手ということもあるようです。このため、介護に悩んでいても、それを誰かに相談するということが少ないとされています。さらに、介護に対しても、仕事に対するのと同じような完璧主義を持ち込みやすいとも言われます。結果として、虐待や介護殺人という悲しい事件にまで発展してしまうこともあります。

もはや逃げられないと覚悟を決めて勉強をはじめたい

自分以外の誰かが、親の介護をしてくれるわけではないという覚悟が、特に男性に足りていないように思います。介護がはじまったら、プロの介護職に任せておけばいいと考えているなら、それは間違いです。確かに、介護職のお世話になることは間違いないでしょう。しかし、介護職に頼れるのは、介護のうちのほんの一部であるという認識も必要です。

悪いことに、国が介護に使える財源も枯渇していきています。以前であれば受けられた介護サービスが、受けられなくなっていくという流れは、今後も悪化することはあっても、改善されることはないでしょう。そうなると、ますます、男性が介護の現場に出ていく可能性は高くなっていくのです。

たとえ、妻が専業主婦だったとしても、妻にも両親があります。夫婦の両親が4人いて、夫婦に兄弟姉妹がいない場合、専業主婦だからといって、この4人全員の介護を行うことは不可能です。また、将来的には、老老介護という状況で、妻の介護をすることにもなるかもしれません。

男性こそ、仕事と介護の両立について真剣に考え、学ぶ必要性が高まっているのです。

※参考文献
・内閣府, 『平成28年版高齢社会白書』

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