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これから、多くの企業で、介護離職が深刻化していきます。背景としては(1)兄弟姉妹が少ない(2)未婚者も多い(3)専業主婦が少ない、ということがあるのです。この背景によって、仕事をしている人も、主たる介護者(介護に最も時間を使う者)になりやすい状況が生まれています。
仕事をしながら子育てをしている人もいるのだから、介護もやれるという意見があります。しかし、子育てと介護は全く違うものです(詳しくはこちらの過去記事を参照ください)。
子育てと介護の一番大きな違いは、子育ては「自分が育てられる」という経験を通して大人であれば誰もが全体像を理解しているのに対して、介護は「自分が介護される」という経験がないため誰にとっても右も左もわからない状態ではじまるということです。
これに加えて、日本の社会福祉は、知っている人だけ助かる(知らないと損をする)という特徴を持っています。そして介護は、右も左もわからない状態(知らない状態)ではじまるため、その初期において正しい支援が行われないと、仕事との両立が不可能になりやすいのです。
企業は、この背景に気づきはじめています。従業員に、介護に関する正しい知識を授け、専門家による支援を受けさせれば、離職リスクを下げられるのです。そこで、こうした役割を担う専門の担当者(組織)を作り始めています。様々な名称で呼ばれていますが、実質的には、介護相談窓口といったところです。
KAIGO LAB として複数の企業の人事部に取材した結果、こうした介護相談窓口の仕事は、大きく7つに分類されることがわかりました。その7つとは、以下のようなものになります(詳しくはこちらの過去記事を参照ください)。
1. 介護問題の定期的なアセスメントと報告
2. 社内の介護に関する知識向上・啓蒙活動
3. 個別のインテーク&両立カルテ作成・保存
4. パニック・シューティング(初期介護対応のサポート)
5. 個別従業員の定期モニタリング&アドバイス
6. 個別従業員の両立キャリア相談
7. 人事制度改革における介護視点でのリーダーシップ
そんな中、東京海上日動が、非常にレベルの高い介護相談窓口の設立を発表しています。介護相談窓口を完全にアウトソースする企業も増えていますが、これをあえて内製しようとするものです。以下、NHK NEWS WEBの記事(2016年11月8日)より、一部引用します。
企業の間で、家族の介護を理由に仕事を辞める「介護離職」を防ごうという取り組みが広がるなか、損害保険大手の「東京海上日動火災保険」は、介護関連の公的資格を持ち、休業制度にも詳しい人材を育成して、社員の相談に応じるという異例の制度を始めることになりました。
関係者によりますと、「東京海上日動火災」は、ケアマネージャーの公的資格を持つグループ会社の社員を対象に、会社の人事制度などの研修を行って介護と休業制度の両方に詳しい人材を育成し、社内の「産業ケアマネージャー」に認定する制度を今月から始めます。この「産業ケアマネージャー」は、仕事と介護の両立に悩む社員の相談に応じ、在宅勤務や休暇の分割取得などを活用した多様な働き方を提案します。
介護相談窓口をアウトソースせずに内製することの最大の意義は、キャリア相談を同時に受け付けることができることです。アウトソース先には、介護の専門性はあっても、介護をしながら、その会社内で活躍し続けていくためのキャリア相談には対応できないという弱点があります。東京海上日動は、これを嫌ったのでしょう。
※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『社員の介護離職を防げ 東京海上日動が異例の制度』, 2016年11月8日
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