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介護のプロでさえ、介護離職をしている現実(ニュースを考える)

介護のプロでさえ、介護離職をしている現実

介護を理由に仕事を辞める介護離職について

現在はまだ介護に直面していない人も、今後、2025年までの間に、介護がはじまる可能性が高くなっています。過去の時代とはことなり、現代は、兄弟姉妹が少なく、逆に、介護の必要がある高齢者の数が増えていく時代です。これからの日本の介護は、過去の介護とは違うという認識が必要です。

KAIGO LAB が把握しているだけでも、都内の大企業の人事部は、この事実を把握しています。介護離職の数字自体は、まだ、それほど深刻ではないものの、介護を理由とした転勤の拒否といったことは、頻発しはじめているようです。

これは、これまでの過去が、今後も続くような連続的な日常ではなくて、非連続な変化です。インターネットの登場以前と以降のような、そうしたレベルでの社会変化があると考えておいたほうがよいと思われます。ただ、人間はどうしても、こうした非連続な変化というものを実感できないという点が難しいのです。

お金があればなんとかなる・・・わけではない

もしかしたら、お金さえあれば、介護はなんとかなると考えている人もいるかもしれません。しかし、これからは、そもそも介護支援を仕事としてくれている介護のプロの人数が足りなくなっていきます。お金があって、介護支援をお願いしたくても、お願いできる人がいないという状況になるのです。

介護のプロが人数的に確保できない理由として一番大きいのは、その待遇の悪さです。全産業の平均と比較して、年間で100万円以上も安い待遇というのが、介護のプロの現実です。なんとかしようと、刑務所を退所する人々の介護業界への誘導なども行われていますが、全く足りない状態です。

介護のプロの待遇を改善するという話は、なんども出ます。しかし、そもそも、今のままの介護でも、2025年までには2倍の国家予算(介護保険料+税金)が必要になるのが介護です。予算的に、ほとんどもう無理という状況にあって、介護のプロの待遇を改善するのは、かなり難しいことです。

その上、さらに介護のプロも介護離職している

こうした環境にあって、介護のプロもまた、一般の企業に勤務する人々と同じように、介護離職しはじめています。特に介護のプロは「介護に詳しいのだから」という理由で、家族から、要介護者の介護に専念することを期待されやすい存在です。

この、介護のプロの介護離職が進んでしまえば、日本全体の介護離職も増えてしまいます。しかし、状況はよくありません。これに関する調査結果を、朝日新聞が報道(2016年8月7日)しています。この報道より、以下、一部を引用します。

調査は昨年10月、介護に関わる1万7643事業所と介護現場で働く5万2929人を対象に実施。事業所の51%、従業員の41・3%が回答した。過去3年間に介護を理由に退職した従業員がいたかどうか聞いたところ、事業所の23・5%が該当していた。

従業員に対する質問で「現在、介護をしている」と「ここ数年のうちに、介護の可能性がある」と答えた人は計42・3%。将来、介護に直面した場合、仕事を続けられるか聞いたところ、29・1%が「続けられない」と回答した。

介護ロボットの登場は、近未来には期待できない

介護ロボットが実用化されれば、こうした状況は改善されるでしょう。しかし、現代の介護ロボットは、入浴や排泄といった、最も大きな介護負担となるところに対して、ほとんど無力です。今、開発されている介護ロボットの多くは、ちょっとした会話をするような、身体介助ではなくて、精神介助のほうに向かっています。

介護離職は、入浴や排泄といった、時間的にも体力的にも厳しい介護を自分で行うとき、そのリスクが高くなることが知られています。しかし、介護ロボットの開発は、この分野に対しては、まだまだ進んでいません。

入浴や排泄までをもこなすような介護ロボットの実用化は、どんなに早くても、2025年には間に合わないと考えておいたほうが無難です。そうなると、本当の意味で改善しないとならないのは、介護のプロの数を確保することになります。

介護のプロが足りなければ、日本社会全体の介護離職は止められません。介護のプロを確保するには、介護職の待遇を改善する必要があります。そのためには、財源の確保が必要になるのですが、その財源は・・・もはや限界に近く、介護サービスの改悪がはじまっているという状況なのです。

※参考文献
・朝日新聞, 『介護職員、「家族の介護」で離職 事業所の4分の1経験』, 2016年8月7日

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