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労働組合の位置付けは、過去とは違った形になってきています。ただ、全体の賃金を上げるという交渉は、時代にそぐわないものになってきています。もちろん今でも、会社側の不当な対応を牽制することは、労働組合の大事な仕事です。しかし、それだけでは、不十分です。
これからは、介護というテーマが、従業員に重くのしかかってきます。この問題を軽く考える経営者がいたら、会社の介護支援制度の充実を訴えていくというのは、労働組合にとって大事なことになっていくでしょう。
そうした中、日立製作所の労働組合が、2016年の春闘(労働条件の改善をめぐる労使間の交渉)において、介護を重要なテーマとしてとりあげ、経営側との合意に至りました。以下、JCAST会社ウォッチの記事(2016年3月16日)より引用します(太字はKAIGO LAB)。
日立製作所は、家族の介護や育児と仕事の両立をめざす社員を支援する、新たな制度を設けることを、2016年3月16日に明らかにした。同社の労働組合が16年の春季労使交渉で介護支援制度などの拡充を求めていたことに対応した。16年4月をめどに導入する。
介護支援制度は、賃金の40%を3か月支給している国の雇用保険制度に対して、日立は最大1年間(国からの給付期間が切れる4か月目から)、独自に賃金の50%を「介護休職給付金」として支給する。
素晴らしいですね。お金の心配が少しでも軽くなれば、介護の不安も少なくなります。これだけでは不十分な面もあるかと思いますが、それでも、大きな前進でしょう。他の会社も、こうしたニュースから刺激を受けて、自社の介護支援制度のあり方を考えていくことになると思われます。
ホンダの事例などにもある通り、少なからぬ日本企業は、介護支援制度の拡充を急ぎ始めています。新たに介護のための財源を確保するケースもありますが、既存の手当てを見直すことで、介護への手当てを手厚くするケースもあります。
具体的には(1)配偶者手当をなくして介護手当の財源とする;未婚者や共働きが増えた現代に配偶者手当はそぐわないため(2)残業手当を減らして介護手当の財源とする;そもそも残業によって業績を確保するという時代でもないし、介護がはじまれば残業もできない(3)出張手当を減らして介護手当の財源とする;Skypeに代表されるネット会議が当たり前になった今、出張が多いと手取りが多くなるというのは間違ったインセンティブになる、といったことは、どこの企業でもすぐに着手できることでしょう。
介護支援制度の拡充が他社よりも遅れた結果として、優秀な従業員が介護離職してしまった場合、必ず責任問題になります。介護離職が目立ってきたら、人事担当役員は、他の役員から「他社がしっかりとした介護支援制度をつくっているのに、うちは何をしているんだ?」と言われるでしょう。同様に、労働組合も「他社の組合は、介護支援制度の充実を要求して通しているのに、うちの組合は何をしているのか?」ということにもなりかねません。
まずは、全従業員に占める40歳以上の従業員の割合を調べてください。なぜなら、40歳以上になると、親の介護がはじまる可能性が高くなるからです。そうした介護リスクを抱えている従業員が、全従業員の何割になるのかを知ることは、介護リスク削減の第一歩です。
日本全体の平均年齢は46歳です。ですから、男性従業員の過半数が40歳以上という会社は、決して少なくありません。このベテラン・管理職層が、介護離職のリスクを抱えているのです。この層に対して、介護離職を予防する施策を網羅的に考えて、選択的に実施するということが必要です。
そして、すでにそうした活動をしている会社が増えてきています。「いつかやる」では遅すぎます。まだ、なんの手も打っていないなら、すぐにでも介護支援制度の構築プロジェクトチームを立ち上げるべきです。このプロジェクトチームには、人事部、労働組合、経営企画室などがメンバーとして入る必要もあるでしょう。
そこから、現在、すでに介護をしながら仕事をしている従業員の人数・割合などを明らかにします。さらに、その割合が、今後どのように増えていくのかというシミュレーションも必要です。その上で、介護支援制度の充実のために、どれだけの予算を確保すべきかについて考えていくことになります。
※参考文献
・JCAST会社ウォッチ『日立、少子高齢化に対応し手厚い給付金 介護離職に賃金半分を最大1年』, 2016年3月16日
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