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竹田遊さん
竹田さんは慶應大学卒業後、音楽クリエーター、プロデューサーとして活躍し、10年近く音楽制作会社を経営しています。みなさんも聞いたことがあるようなアーティストの曲を多数手がけており、自社からメジャーアーティストも世に送り出しています。近いところでは、若い女性に人気の「病みソン」ブームの仕掛け人として知られています。
仕事は楽ではありませんが、とても充実しているそうです。竹田さんは、音楽を仕事にすることの楽しみは、創作活動そのものが持っている楽しみだと考えています。子供がお絵描きをするのと同じで、創作活動は、自らを対象に没頭させ、その集中からもたらせれる心の平穏があると言います。
同時に、音楽で食べていくことの厳しさは、かなりのものです。ずっと「明日はどうなるかわからない」暮らしを続けることは強烈なストレスでもあるそうです。ただ、竹田さんは「それも、自分で選んだことだ」と言います。
そんな竹田さんのお母様は、2005年に若年性の認知症を発症しました。早期発見ができたため、当時は、それほど深刻ではなく、通院しながらも、日常生活はなんとかこなせていました。要介護認定を受けたものの「これくらいなら、行ける」と感じたそうです。
しかし、2006年に竹田さんの祖母(お母様のお母様)が亡くなったときから、認知症の状態がやや深刻化します。竹田さんは、知識としては環境の変化が認知症を悪化させることは知っていたものの、現実にそれを目にするのはショックでした。ここから、日常生活にも支障が大きくなっていきます。要介護度も高まりました。
そして決定的だったのは、2008年に竹田さんの祖父(お母様のお父様)が亡くなくなったことでした。ここから、お母様との意思の疎通が段々できなくなります。
入所できる介護施設を探しながら、4年間におよぶ在宅介護となりました。幸い、竹田さんの仕事は比較的時間の自由がきく仕事でしたが、それでも仕事にかなりの支障が出たそうです。そして2012年に、特別養護老人ホームへの入所となりました。
竹田さんは「こういう言い方をするとよくないかもしれませんが」と前置きをしながらも、お母様が特別養護老人ホームに入れてもらえて、本当に楽になったそうです。竹田さんは、やっと「まともな介護」ができると感じています。
在宅介護中は、お母様の徘徊、幻覚症状、妄想が激しく、非常に大変でした。警察に呼び出されて行ってみると、コンビニでトラブルを起こしていたりといったこともあったそうです。
認知症は、医師と連携しながら、要介護者との関わりかた(コミュニケーション)を意識すれば、進行を遅らせることができる病気です。竹田さんは、知識としてそれをよく理解していました。
しかし、とにかく介護に関する雑務が大変で、仕事もしながらの介護は、それどころではなかったそうです。結果として、認知症の度合も要介護5(いちばん上)まで進んでしまい、悔やむところもあると言います。
竹田さんに、認知症の要介護者を在宅介護する方々へのエールをもらいました。以下が、エールになります。竹田さんとしては、少しでも介護者の負担を減らすためにお役に立てたら、とのことでした。
(1)どんなに知識として認知症を理解しても、そしてどんなに注意して認知症の進行を遅らせようとがんばっても、結局「なるようにしかならない」ものです。できる範囲で、病気の進行とは戦うべきですが、結果はわかりません。症状が悪化してしまっても、それは運命だとわりきるしかないです。
(2)親の介護よりも、自分の人生のほうが大事だと思います。親も、自分のために子供の人生が犠牲になることを望んでいないと思います。仮に、子供の不幸を望むような親だったら、面倒をみる必要もないです。だから、自分の人生を犠牲にしすぎない範囲で、できることをやればいいと思います。
(3)ですが、親があまりにもかわいそうなのは良くないです。それは親にとって良くないということではありません。そうではなくて「親がかわいそう」と感じてしまう自分の精神が持たないという意味です。だから、自分を責めてしまうようなレベルまで、親がかわいそうな状況になってしまわないように注意すべきだと思います。
今のお母様は、目線は宙にあり、話しかけても反応しない状態です。そんなお母様に、竹田さんは「孫が生まれるよ」と、エコー写真を見せました。すると、お母様は明らかにそのエコー写真のほうを向いて、笑ったそうです。
竹田さんと奥様は、その奇跡を目にして思わず涙しました。お母様が、自分に孫ができることを正しく認識できたのかどうかはわかりません。ただ、みんなが笑顔になれる瞬間というのは、私たちが想像している以上に大事なことなのでしょう。
竹田さんのお母様は画家でした。お母様が元気だったころに描いた絵の展覧会(無料)が、今月(2015年10月10日〜14日)開催されます。詳細は以下リンクよりどうぞ。
詳細:第六回;竹田正子展(KAIGO LAB協賛)のお知らせ
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