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介護の負担の中で、最も大きいとされるものの一つが、排泄介助(トイレの手助け)です。現代人にとって、トイレとは、ただの生理現象ではなく、個人の尊厳に直結する、非常にデリケートな部分です。
過去にも記事にしていますが、排泄は、人間の生きる力にも関わっています。他者に遠慮なく、自分で排泄を行うということは、快感でもあります。しかし、その行為を誰かに見られることになれば、快感だったことが、情けなさや恥ずかしさの象徴のようになってしまうのです。
排泄が自分でうまくできなくなると、外出も怖くなってしまいます。外出先で失敗してしまえば、周囲にいる赤の他人にも迷惑をかけるし、そもそも恥ずかしくていたたまれなくなります。
外出が怖くなれば、引きこもりがちになります。それは、多くの人が知っているとおり、介護にとっては良くないことです。外出が減ると、体力の衰えも一気に進んでしまい、要介護の度合いが上がってしまう可能性も高まります。
現在、様々な企業が、介護ロボットの開発を急いでいます。厚生労働省も「介護ロボット協議会」を立ち上げました。そこでは、おそらく、様々なロボットに関する議論が起こっていることでしょう。
ここで、ひとつ提言したいのは、排泄介助ロボットの開発の加速です。他の分野への技術開発も大事だと思いますが、家族にも、要介護者にも心理的・肉体的に負担が大きい排泄介助こそ、介護ロボット開発の本丸だと思うのです。
ロボットの活躍が期待できるのは、排泄介助は、どうしても人間が行うべきことではないからです。さらに、ロボットに助けてもらうほうが、人間に助けてもらうよりも気が楽です。ロボットが相手なら、情けなさや恥ずかしさも感じません。
ニュースなどでは、介護ロボットが高齢者とのコミュニケーションに使われるようなものが多いです。しかし、コミュニケーションは、できれば人間が行ったほうが、ロボットに代替させるよりも良いと思われます。
排泄介助の介護ロボットというのは、なにも、手足があって、人間のような姿をしているものとは限りません。すでに、大和ハウス工業と株式会社エヌウィックが「マインレット爽(さわやか)」という、排泄に特化したロボットを開発しています。
また、排泄のタイミングを予測する「DFree(ディフリー)」は、介護ロボットのあるべき未来を予想させてくれます。
厚生労働省の「介護ロボット協議会」には「排泄介助ロボット分科会」をつくるべきです。または、そこにしっかりと予算をつけて、知的財産権の日本企業内での共有化などを整備していく必要があります。
なんとなく偉い人が集まって、なんとなく話を重ねて、なんとなく議事録だけを作成しているような会議体は、無意味どころか害悪です。それは、日本が過去に失敗してきたパターンの一つであり、どうしても避けて通るべき関門です。
キモになるのは(1)研究資源・リスク・コスト・知的財産をみなで分かち合うこと(2)参加するメーカーの「非競争領域」を正しく定義すること(3)研究テーマの設定は官僚ではなく現場に近い専門家に任せること、の3つであること(IMECモデル)は既にわかっています。
おそらくは、車イスと変わらないまでに小型化した自動運転の電気自動車メーカー、トイレメーカー、薬剤メーカー、通信事業者などが参加する必要があります。
これを、異なる業界の連携もなく、同じ業界内でも企業がそれぞれバラバラに開発を進めている限り、アメリカやヨーロッパの企業集団に追いつかれ、追い抜かれるという過去の歴史を繰り返すことになるでしょう。
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