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また島津製作所が!微量の血液から認知症の推定ができる?

また島津製作所が!微量の血液から認知症の推定ができる?

ノーベル賞受賞の技術を応用した検査

島津製作所は、ノーベル賞受賞の技術を応用し、アルツハイマー病のリスク分析の事業を開始しました。KAIGO LABでも、以前『簡単な血液検査で、アルツハイマー病の診断が可能に!またもや田中耕一さんが!』という記事で、この事業について簡単に紹介しています。

この新しい技術は、かつて10万円ほどかかっていた検査費用を数千円にまで削減するというものです。「アミロイドMS受託解析サービス」と呼ばれるもので、2018年8月7日より受託分析が開始されています。以下、産経ニュースの記事(2018年8月8日)より、一部引用します。

島津製作所は7日、わずかな量の血液で、認知症の一種であるアルツハイマー病の原因物質が脳にどれだけ蓄積しているかを調べられる検査法を使った受託分析サービスを始めたと発表した。まず日本や米国の製薬会社からの受注を受け付ける。新薬の開発でコストを抑制できるなどの効果が期待できるという。(中略)

こうした分析手法は、1月31日付で英科学誌ネイチャー電子版に掲載。平成14(2002)年のノーベル化学賞受賞者で、同社の田中耕一シニアフェローらが開発した質量分析技術の手法を使った検査法を事業化した。(後略)

アミロイドβの蓄積とアルツハイマー病の関係は・・・

この島津製作所による取り組みは、非常にありがたいものです。同時に不安もあります。それは、脳内に蓄積するアミロイドβと呼ばれるタンパク質と、アルツハイマー病の関係です。少なくとも、この物質を除去することでは、認知症は改善しないという意見が多くなっていることは、認識しておく必要があります。

同時に別の希望もあります。アルツハイマー病を発症してしまってから、アミロイドβを除去してもダメだとしても、その蓄積を抑えれば、アルツハイマー病にならないかもしれないという可能性です。こちらが事実であれば、生活習慣の見直しなどによって、アルツハイマー病を予防することができるかもしれません。

島津製作所による安価な検査技術の登場は、アルツハイマー病の予防にとって非常に重要なものになる可能性があります。ただしそれは、アミロイドβが、本当に、アルツハイマー病の引き金になる原因である場合だけです。ここが崩れてしまうと、この検査技術の意味も薄れてしまうでしょう。

認知症の原因解明のためにこそ利用されるべき技術

そう考えると、今回の島津製作所による発明は、個人が自分の認知症リスクを判定するためのものというよりも、研究者たちが、認知症の原因を特定するための技術と言えるのかもしれません。その意味では、やはり、この島津製作所による発明には、大きな意義があることが認識されます。

こうした研究には、多くの人の支援が必要になります。金銭的な支援ももちろんなのですが、認知症に苦しんでいる人の協力、サンプルとしての健康な人の協力も重要です。こちらから出向く必要はないでしょうが、協力を依頼されたら、可能な範囲で支援したいところです。

世界でもっとも高齢化している日本だからこそ、世界に先駆けて、高齢化に伴う様々な問題の研究を、世界に発信していきたいものです。そのためには、みんなで、研究者を支援していくことが求められます。研究者でなくても、きっと、できることがあるはずです。

※参考文献
・産経ニュース, 『血液数滴でアルツハイマー検査 島津製作所、サービス開始』, 2018年8月8日

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