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認知症が出てしまうと、いまの自分がいる場所や時間がよくわからなくなることがあります。特に、アルツハイマー型認知症の場合は、体内時計を司るところに障害を持ってしまうことがあり、こうした睡眠障害に悩まされるケースが多くなります。
これは、昼夜逆転(というよりも夜間であることが認識できない)につながります。昼夜逆転が起こってしまうと、その介護を担う人々の負担が極端に高くなってしまいます。なんとか、この状況を打破しようと、パナソニックが技術を開発しています。以下、日刊工業新聞の記事(2018年4月30日)より、一部引用します(段落位置のみKAIGO LABにて修正)。
パナソニックは認知症の高齢者などに多い、眠る時間が昼夜逆転する生活リズムの解消に向け、照明と人感センサーを使ったサービスを開発する。子会社が運営する介護施設を使い、6月に実証を始める。
太陽光のように時間帯によって照明の明るさなどを変え、本来持っている生活リズムに戻す。睡眠状態はエアコンにセンサーを取り付けて把握する。家族や介護職員の負担軽減につながる技術として、有効性を確認した上で全国の介護施設に提案する。(後略)
介護というと、どうしても、介護を受ける本人(要介護者)のことが想像されます。もちろん、本人の状態をより快適にすることも大事なのですが、本人の介護を行う家族や介護職の負担という面は、もっと広く世間で知られてよいと常々感じます。
しかし、地球の裏側で起こっている紛争と同じように、私たち人間には、自分が巻き込まれていない問題について、興味や関心を持つのが難しいという特徴があります。ただ、介護の問題は、地球の裏側ではなくて、自分の近未来に発生することです。もう少し、世間の興味や関心が上がってもよさそうなものです。
ただ、世間に対してこうあってほしいと願っても、そのようにならないことはたくさんあります。であれば、具体的にどうすれば、世間がもっと介護に興味や関心を示してくれるのでしょう。その一つの回答が、今回のパナソニックによる試みにあります。
介護ビジネスに関わる人が増えていけば、介護は地球の裏側の話ではなくなるということです。それは、今回のニュースのように介護をする側の負担軽減であってもいいし、もちろん直接、介護を必要とする本人の負担の軽減でも構いません。
介護業界は、2000年の介護保険制度の開始から現在まで、労働者ベースで考えると4倍にまで成長している産業です。現代において、これほど多くの雇用を短期間で吸収した産業が他にあるでしょうか。それだけ、ニーズの成長が著しいということです。
介護の負担は、世界共通です。もし日本が、介護をする側の負担軽減技術において世界の最先端を走ることができたら、それは、日本の基幹産業として、世界に輸出することが可能になるでしょう。そのとき、私たちの多くは、なんらかの形で、介護に関わっていくことになります。
同時に、介護の他には、そのような産業は、日本には残されていないように見えます。確かに、自動運転技術や人工知能、医療や医薬品など、これからの産業は多数あるでしょう。しかし、介護以外の他の分野では、日本は世界から遅れており、人口減少社会に突入している日本が、ここから追いつくのは困難なことに感じられます。
それらと比べれば、介護は、世界でもっとも高齢化が進んでいる日本だからこそ、チャンスがあるのです。世界の他の国からすれば、介護はまだまだ地球の裏側の話のように感じられるはずです。しかし日本では、それが世界一早く社会問題化していくのです。
※参考文献
・日刊工業新聞, 『高齢者の昼夜逆転解消 パナ、照明・センサーで6月実証』, 2018年4月30日
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