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入浴支援の介護ロボット、開発の加速へ(富山大)

入浴支援の介護ロボット、開発の加速へ(富山大)

深刻さを増す介護人材の不足問題へのアプローチ

介護人材の不足は深刻さを増すばかりです。根本的な解決には、全業界中でも最悪と言われる待遇の改善が必要です。しかし実際には、介護現場にボランティアを呼び込むといった、根本的な解決からはかけ離れた施策が提案されていたりします。

経済産業省によれば、2025年に32万人不足すると言われる介護人材は、2035年にはその倍以上の68万人も不足すると推定されています。介護人材がいないということは、介護が必要になったら死ぬしかないという高齢者が増えるということでもあります。

直接的に待遇を改善するのとは少し別のアプローチとして、介護人材の生産性を向上させるという方向での戦いも続いています。1人あたりの介護人材が介護できる高齢者の人数を増やせれば、人材不足が緩和されるだけでなく、介護人材の待遇もまた改善できる可能性があるからです。

富山大学による入浴支援の介護ロボット開発

そうした中、介護の負担の中でも際立って大変と言われる入浴介助を支援する介護ロボットの開発がニュースになっています。以下、日本経済新聞の記事(2018年4月17日)より、一部引用します(段落位置のみKAIGO LABにて修正)。

富山大学は開発中の入浴介護アシストロボットを2021年までに製品化する計画を公表。(中略)通常ならば介護職員2人で対応する入浴介護が1人で済むといい、人材不足に悩む介護施設などの需要を見込む。(中略)

現在、介護現場で利用されているのは、車いすの要介護者などを浴槽に移す入浴リフトと呼ばれる機器だ。要介護者を抱きかかえる負担は軽減されるが、機器を操作する人と要介護者の体を支える人が必要だ。開発中のロボットはAIを使うことで、機器を操作する人が不要となり、1人で入浴を補助できる。(中略)

産学官連携の輪をこの先も拡大し、製品化への流れを加速させる。まずは早期に実物大の試作機を完成させたい考えで、県内外から協力企業を募る。販売戦略などは北陸銀行が協力する。(後略)

最大の問題は価格ではないだろうか

入浴支援に関しては、実はすでに複数のメーカーが、車椅子からの移乗がほとんどないようなロボット風呂を製造・販売しています。非常に優れたもので、すでに、こうしたロボット風呂があれば、介護人材による支援がほとんどなくても入浴することが可能だったりします。

ただ問題は、価格です。いまのところ、優れたものは非常に高価であり、一部の高級老人ホームに設置されているくらいです。稼働しているのをみると、戦闘機のコクピットのような構造になっていて、感心させられます。しかし世間一般には、そんなロボット風呂など見たこともないというのが実情ではないでしょうか。

今回の富山大による介護ロボット開発のニュースも、価格面について触れられていないことが気になります。もし高価なものになってしまえば、既存のロボット風呂と同じように、高級老人ホームでのみ稼働するようなものになってしまいます。そうなれば、介護人材の不足問題へのインパクトがなくなってしまいかねません。

※参考文献
・日本経済新聞, 『入浴介護支援ロボ、21年までに実用化 富山大など産学官で』, 2018年4月17日

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