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食べることは、非常に重要なことです。特に、健康だった高齢者が、介護を必要とする要介護者に変わっていくプロセスには、低栄養があることが知られています。食欲が低下することもあるでしょうが、とにかく、栄養はしっかりと摂取していかないとならないのです。
高齢者でも食べやすく、十分な栄養の摂取ができる介護食が求められています。現実には、介護が必要になる前から、そうした食事が必要なので、一概に介護食と言っても、その中身は、高齢者の状況に合わせて、様々な形態がありえます。まずは以下、日経ビジネスの記事(2019年9月30日)より、一部引用します。
人手不足が深刻な介護業界。介護食の調理の手間を省くなど、人手不足でも業務を進められる仕組みが急務になっている。そのため食品各社が相次ぎ介護食に注力している。(中略)マルハニチロは介護食を成長分野と位置付けている。18年度の売り上げは16年度比で約20%増加し、19年度も18年度比13%の増加を見込んでいる。新商品の投入で事業拡大を図る。(中略)食品メーカーにとって介護食は、人口が減少する国内市場では数少ない成長市場だ。医療費削減の観点から政府は在宅介護を推進しており、今後は家庭用介護食も増加していくと見込まれる。
介護食の市場は、農林水産省の試算では、年間2.5兆円市場と言われます。しかし現実に出荷されている介護食は2,000億円にも届かない状態です。この背景にあるのは、在宅介護の現場に向けた販売チャネルの構築が難しいというあたりにありそうです。
在宅介護のための家庭用介護食のニーズが高まることは確実で、食品業界で、ここまで成長する領域は他にないと考えられます。しかし、そうした家庭用介護食は、どこに置けば売れるのでしょう。そもそも、スーパーやコンビニに足を運べなくなっているからこその要介護状態でもあるわけです。
大手の介護施設であれば、B2Bですから、メーカーとして介護食を現場に届けるのは比較的簡単です。しかし在宅介護の場合、誰が、何を、どこで買っているのか、そもそもトラッキングが非常に難しくなります。要するに、メーカーとしては、商品をどこに置けば売れるのか、わからないのです。
パルシステムのように、宅配のチャネルを活用するという方法は、すでに相当程度、検討されテストされているでしょう。しかし、こうした宅配のシステムには「よく知られている商品しか売れない」という難しさがあります。過去に買ったことのない新商品を、宅配で買うということはあまりないのです。
その点、介護食は、新しく企画され商品となっていることが多く、どうしても、宅配との相性が(まだ)よくないという印象です。今後、介護業界が介護食のチャネルとなる可能性はあります。しかしまだ、在宅介護の市場は(明確には)見えていないというのがメーカーの本音ではないでしょうか。
いずれにせよ、在宅介護のための家庭用介護食の市場は、必ず大きくなります。遅くとも2025年までには、その本格的な立ち上がリが見えるでしょう。ただ、その立ち上がりが、どういう形になるかは、まだわかりません。ここには、なんらかのイノベーションが起こるはずです。
※参考文献
・日経ビジネス, 『人手不足で需要増、食品メーカーが力を入れる介護食』, 2019年9月30日
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