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高齢者は、毎日3食、規則的な食事をする傾向があります。高齢者とはいえ、生きていくために必要な栄養素の量は、若い時とほとんど変わりません。しかし、噛む力や飲み込む力が弱まったりして、これまでと同じものは食べられないことは多くあります。
結果として、栄養素が足りていない高齢者が増えています。そこで注目されているのが、介護食です。広い意味で介護食とは、噛む力や飲み込む力が弱まっている人ために、柔らかさや飲み込み易さを重視しつつ、同時に、栄養に優れた食品のことです。
ただ、介護食の特徴として、いちいち「介護食」ということを商品名にしているものは(ほとんど)ありません。「はつらつ食品」とか「いきいき食品」とか、そうした、高齢者に抵抗の少ないネーミングになっています。
その意味では「介護食」を食べる人というのは、決して要介護者に限られないということです。高齢者で「少しやわらかいほうが嬉しいな」という人も「介護食」のターゲットになるわけです。こう考えると「介護食」という市場の潜在的な大きさが見えてくるでしょう。
「介護食」は、病院や介護施設向けには、主に医療・介護食品専門卸業者が行っています。ここは、本業が厳しくなってきている病院経営や介護施設経営としては、サイドビジネスとしたいところでしょう。
これに対して、一般向けには、様々な食品加工業者が参入してきています。しかし、その多くは通信販売です。まだ、一般の小売店には「介護食」はそれほど並んでいないのが現状です。高齢化社会が進むのですから、これから、ここが大きくなっていきます。
まず、65歳以上の高齢者人口は3,186万人(2014年)で、日本の人口の25.0%(4人に1人)です。さらに、65歳以上の単独世帯は2010年時点で約30%ですが、これが2030年には約40%になります。一人暮らしの高齢者の場合、自炊するよりも「介護食」を買う人が多いと予想されます。
農林水産省の試算によれば、今のところ「介護食」の市場規模は1,100億円にすぎません。しかしこれが、同省の試算でも、潜在的に約3兆円まで伸びる可能性があるそうです。しかもこの試算は、日本国内の話です。世界に先駆けて高齢化する日本で生まれる「介護食」は、将来の輸出産業として発展していく可能性があります。
こうなってくると、多くの企業が「介護食」への参入を決めるでしょう。これは、競争の激化を意味しています。企業間の競争が激しくなると、消費者はそこから多くの恩恵を受けることになります。
まず、美味しくて、栄養素に豊富な「介護食」が、安価に提供されるようになるところまでは普通です。そこから、ただ安くて美味しいという「介護食」は淘汰されていきます。生き残る「介護食」には、高齢者の様々な問題を予防するような栄養素が追加されていくことになるでしょう。
たとえば、認知症を予防するような栄養素、ロコモティブシンドロームを予防するような栄養素、目や耳の衰えを予防するような栄養素などが研究開発され、安くて美味しくて見栄えの良い食品として、スーパーやコンビニに並び始めると思われます。
これは、とても楽しみなことですし、日本の将来を明るくする話題でもあります。
※参考文献
・日本農業新聞, 『国産使い介護食 “産地発”6次化戦略「安全・安心」強み』, 2015年11月19日
・高木正治, 『介護食の市場動向~ロコモティブシンドローム、サルコペニアを中心に~』, FoodStyle21, vol.16, no.3(2012年)
・食料産業局, 『介護食品をめぐる事象について』, 平成25年2月
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