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介護において、食事の介助は、負担の大きな部分のひとつしとて知られています。介護離職という視点からも、食材の買い出しを含めた家事を担っている人の介護離職をする確率が高くなる傾向も指摘されています。
こうした食事の介助の負担について、さらに一段、内容を深めて行われた調査結果が報道されています。実は、食べることの介助の負担は、それほど大きくなく、むしろその準備段階のほうが大変という意見が多かったのです。以下、マイナビニュースの記事(2018年11月11日)より、一部引用します。
TPC マーケティングリサーチはこのほど、「介護における食事の実態と今後のニーズ」の調査結果を明らかにした。同調査は9月6日~9日、同居家族に在宅の要介護者を抱える家族615名対象にインターネットで実施したもの。
介護の食事における負担度について尋ねたところ、「食事の準備・調理」(52.4%)が最も多く、次いで「食材の買い出し」(40.2%) 、「食事の後片付け」(34.1%)、「食事介助」(26.8%)と並んだ。
介護食の市場規模は2.5兆円にもなると期待されています。当然、この市場をめぐって、日本の食品メーカーは激戦状態に突入しつつあります。しかし、この市場の開拓は、あまりうまくいっていないのです。一部には、2.5兆円という規模を疑問視する声もあるほどです。
しかし、そもそも人間は、なにかを食べないと生きられません。高齢者が食費を極端に小さくしないかぎり、この市場規模の推定が大きく外れるというのは、ちょっと考えにくいのです。問題は、高齢者の食事は、誰が意思決定を行い、どこで、なにを買っているのかといったことが、よくわからないことです。
この問題解決の糸口が見えないのは、介護食というものの具体的な中身についての理解が進んでいないからです。介護食だからといって、それが、わかりやすく介護食として売られているものばかりではありません。一般向けの食品が細かくきざまれて提供されていることも多いのですから。
介護食をあらたに開発し、それをヒットさせるのは、簡単ではなさそうです。しかし、今回の調査結果を見るかぎり、食材の買い出しと調理の負担を下げるような商品やサービスであれば、その市場の可能性はずっと明確です。
その証拠に、配食市場は、2009年度から2014年度の6年間で、1.8倍以上に拡大しています。配食は、食材の買い出しと調理の負担を一気に解消してくれるわけですから、この市場は、今後もさらに伸びていくことになるでしょう。
ただ、配食ビジネスには、食材の調達にも、配食にも、物流コストが発生してしまい、どうしても利益率が低くなってしまうという弱点があります。結局、物流が一番安定的に儲かるという話にもなりかねません。そして今のところは、そうした方向が明確になりつつあります。
もちろん、物流が儲かること自体には問題はありません。ただ、こうした状況に変化がなければ、介護食自体は、将来の日本にとって輸出産業にはならないでしょう。日本の将来という視点からは、食品メーカーに、画期的な商品を開発してもらうことも大事なのです。
そこでどうしても大事になるのは、食べる人にとっての価値とはなにかという認識です。特に食べる人は、健康になりたいのではなく、幸せな気分になりたいというところでの誤解は、意外と多いように思います。
もちろん、健康だとより嬉しいのですが、私たち自身も、自分の健康第一というよりも、幸福を重視するように生きているでしょう。食事についても、美味しくて幸せな気分になることが先であって、健康はその次になるというところに、この問題の難しさがあるように思います。
※参考文献
・マイナビニュース, 『市販の介護食の利用意向と要介護度の関係性が明らかに』, 2018年11月11日
・厚生労働省, 『配食事業の動向等について』, 2016年7月19日
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