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高齢者になると、唾液の分泌が悪くなり、また、飲んでいる薬の副作用などもあって、口の中が乾きやすくなります。この状態になると、食事が面倒になって低栄養状態になったり、誤嚥性肺炎にもつながると考えられています。
このように、継続的に口の中が乾いた状態になることを、専門的にはドライマウス(口腔乾燥症)と言います。ある調査(遠藤, 2013年/サンプル数111人)では、高齢者の53.6%にドライマウスが認められました。これだけで全体を表しているわけではありませんが、それでも、医療関係者の間では「ドライマウスが増えている」と認識されています。
より大規模な調査では、欧米に暮らす人の約25%がドライマウスとされています。また、日本では約3,000万人が、潜在的なドライマウスの状態にあるという報告もあるそうです。高齢者に限定した場合、実際の数字がどうなっているかは(まだ)わかりませんが、一般に信じられている以上に深刻な問題であることは間違いなさそうです。
注意したいのは、ドライマウスは、女性が男性の5倍多いという報告もあることです(三輪, 2009年)。もしかしたら、シェーグレン症候群と言われる、涙腺や唾液腺に障害をもたらす病気が女性に多い(男女比=1:14)ことと関係しているのかもしれません。
まだ仮説の域を出ませんが、とくに高齢の女性の場合は、ドライマウスを疑ってみることが必要になりそうです。なお、日本全国のドライマウス専門医はこちら(日本ドライマウス研究会)から検索できるようになっています。
すでに「口の中が乾く」「喉が乾く」といった症状が自覚されていて、疑いのレベルを超えている場合は、すぐにドライマウス専門医に相談するようにしましょう。ただ、こうした自覚症状がない場合であっても、安心できないのです。
ドライマウスの自覚症状があって、それを周囲に訴えることができる高齢者の場合は、すぐに専門医に相談する必要があります。ただ、こうした自覚が持てない場合でも、実はドライマウスだったということもありえます。
このとき、ドライマウスの初期症状として知っておきたいのが「クラッカー・サイン」というものです。「クラッカー・サイン」とは、クラッカーやパンのような、水気のないパサパサしたものが飲み込みにくいことを指しています。高齢者が、好きだったクラッカーやパンを避けるようになったりしたら、要注意ということです。
ドライマウスが見つかったら、薬物療法や生活療法が適用されます。とくに生活療法は、シュガーレスガムを噛んだり、梅干しや酢の物を意識して食事に取り入れたり、うがいや歯磨きだったりと、自然で普通な対応だったりします。怖がらずに、疑いがあったら、とにかくドライマウス専門医に相談しましょう。
※参考文献
・遠藤 眞美, et al., 『高齢者のドライマウスのリスク因子に関する研究』, ヘルスサイエンス・ヘルスケア(Volume 13), No.2, 2013年
・三輪 恒幸, et al., 『口腔乾燥症(ドライマウス)の臨床統計的検討』, 日本口腔検査学会雑誌(第1巻/第1号), 40-43, 2009年
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