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貧困の家庭で育つ子供や、孤食(ひとりで食べること)になりがちな子供が増えています。こうした子供のために、地域社会で安心できる場を準備して、そこで子供に食事を与えるという活動は、かなり昔からあります。
2012年ごろから、そうした活動は、とくに「こども食堂」と呼ばれるようになりました。子供にとっては、他者との交流の場であり、大事な居場所にもなります。こうした「こども食堂」には、様々な形態があります。食費も、無料のところが大半で、有料でもかなり安価(100〜300円程度)であることが多いようです。
その場となるのは、公共施設だったり、個人の自宅だったりと様々です。地域のレストランを解放して、子供に料理を教えながら、一緒に作って食べるようなところもあります。朝日新聞の調査(2016年7月1日報道)によれば、昨年の5月末時点で、全国に319カ所の「こども食堂」が確認されたそうです。
今の日本では、貧困状態にある子供は、実に6人に1人とも言われます。そうした背景をうけて「こども食堂」は、全国に急増しているとのことでした。この活動だけで、子供の貧困に対処しきれるものではありませんが、非常に大事な活動であることは疑えないでしょう。
貧困や孤食の状態にある高齢者も多くいます。とくに、高齢者の孤食はうつ病につながりやすいことがわかっています。女性の孤食では、この発症率が一般の1.4倍になり、男性の場合はなんと2.7倍にもなるそうです(共同通信, 2015年)。
また、孤食だとどうしても食べることが億劫になり、栄養が足りない低栄養の状態になりやすいとも考えられています。そうなると、現在は要介護状態にない高齢者でも、すぐにフレイル(虚弱状態)になってしまいます。
高齢者の孤食は、要介護者の増加や、要介護状態の悪化につながります。そう考えると、高齢者の孤食は、個人の問題ではなく、社会問題でもあるわけです。しかし、だからということで、高齢者の食卓に、他人がドカドカと押しかけていくこともできません。なかなか、ハードルの高い問題なのです。
そうした中、先の「こども食堂」と同じ概念で運営される、高齢者向けの「高齢者食堂」が登場しました。思いつくのは簡単なことですが、実際にアレンジして運用にまで持ち込むのは困難だったはずです。以下、西日本新聞の記事(2017年2月23日)より、一部引用します。
独居高齢者の孤立などが社会問題化する中、お年寄りに割引価格で家庭の味を提供する定食店「ハイ元氣食堂」が福岡市博多区諸岡4丁目にオープンした。同市の冠婚葬祭会社「ラック」(柴山文夫社長)が立ち上げた。食堂の営業時間外は交流スペースとしても無料開放する。
同社によると、昨年10月ごろ、貧困に悩む子どもたちを対象とする「子ども食堂」をヒントに、「お年寄りに安くておいしい食事を食べてほしい」と企画。今年1月23日に、同社の葬斎場「西日本典礼諸岡斎場」近くの筑紫通り沿いで営業をスタートさせた。
1、2階が客席。お年寄り以外でも利用でき、メニューは定食が650円、丼物が550~600円とリーズナブル。さらに65歳以上だと100円引きとなるほか、登録した誕生月にはワンドリンクサービスもある。
少し値段が高いような気はしますが、素晴らしい取り組みです。この活動が、子供向けの「こども食堂」のように、日本全国に広がっていくことを希望します。場合によっては、近年広がりつつある宅幼老所(幼老複合施設)と一体化していくとよいかもしれません。
※参考文献
・朝日新聞, 『「子ども食堂」全国に300カ所 開設急増、半数が無料』, 2016年7月1日
・共同通信, 『高齢者の孤食にうつの危険 独居男性は2.7倍』, 2015年10月27日
・西日本新聞, 『お年寄り版「子ども食堂」 「ハイ元氣食堂」開店 営業時間外は交流の場に』, 2017年2月23日
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