KAIGOLABの最新情報をお届けします。
全ての介護は、要介護認定の申請からはじまります(原則として30日以内に結果が出る)。ただ、要介護認定の申請をするときは、介護者には、ケアマネージャー(通称ケアマネ)のような、介護のプロが周囲にだれもいない状況です。運がよいと、ソーシャルワーカーなどがいてくれることもありますが、付きっきりということは(まず)ありません。
介護における最大の山場が、実は、この「介護のはじまり」の時期にあることが多いのです。なぜなら「介護のはじまり」である要介護認定とは、介護の知識も経験もない介護者が、プロの助けなしに、複雑なプロセスをクリアすることだからです。実際に「介護のはじまり」は、多くの介護経験者にとって「パニック」の記憶になっています。
でも、あせらないで下さい。とにかく、要介護認定の申請をします。まず、要介護認定の公式プロセスを理解しましょう。
(1)家族などが、市町村の窓口(介護保険課、高齢介護課など)で「要介護認定」を申請する
(2)市町村の調査員が、被介護者の自宅などを訪問して認定調査を行い「一次判定」が行われる
(3)医師(基本的には主治医)が、被介護者の状況をもとにして「医師の意見書」を書く
(4)専門職が構成する「介護認定審査会」が「一次判定」と「意見書」により「二次判定」を行う
(5)「非該当」「要支援1・2」「要介護1~5」の要介護認定の「結果通知」が送られてくる
ここで知っておくべき裏話は、要介護認定に対してもっとも威力があるのは(3)で作成される「医師の意見書」であるということです。そして医師にとって、要介護申請に関する「意見書」をつくる仕事は、目の前に運ばれてくる患者を治療する仕事に比べれば、かなり優先度が落ちるという認識も大事です。
次々と運ばれてくる急患、待合室から聞こえる助けを求める叫び声、執筆しなければならない論文・・・。医師の仕事は激務なのです。もちろん、ここは一般化はできず、医師にも色々な仕事があり、それぞれに状況は異なります。
しかし「意見書」の作成は、医師からすれば、できればやりたくない「書類仕事」なのは事実です。治療や研究といった、医師本来の仕事ではないからです。
しかし、いかにやりたくなくても、医師は、できるだけしっかりやろうとします。だからこそ、医師としては(2)で作成される「一次判定」の結果だけではとても「意見書」を書くには足りないと感じるそうです。そこで、被介護者のことを診療してきた「主治医」がこの業務に当たるということになっているのです。
しかし、主治医によっては、多数の患者を抱えていて、いちいち個々の患者のことを細部まで覚えていないケースもあります。そうした主治医は、この処理しなければならない「書類(意見書)」を前にして、途方にくれます。全ての医師がこうだというつもりはありません。ただ、そうした医師もいるのは事実です。
この背景を受けて、医療機関(病院など)によっては、被介護者の家族に記入してもらう「独自の書類」を追加で準備しています。これによって要介護認定のプロセスにおける「情報不足」を、なんとか補おうとしているのです。そうした「独自の書類」がある医療機関にあたっていれば、問題はありません。
しかしそれでは、大事な要介護認定が「運任せ」になってしまいます。そこで、要介護認定の申請をするときに注意したいことを、以下にまとめてみます(KAIGO LAB独自取材;複数の医師に聞いた話です)。
要介護認定のプロセスでは、意見書を書いてもらう医師を指名することができます。ここで指名する医師は、被介護者を直接担当してくれている医師(主治医)であるべきです。それによって、医師としては、申請書に足りていない情報を、自らが記録してきたカルテによって補うことができるからです。
ここで、主治医ではない医師を選ぶのは、選ばれる医師にとって辛いことであることは、先に述べたとおりです。ただし、医師によっては、要介護認定に本当に疲れていて、主治医であるにも関わらず、全く対応してくれないケースもあります。でも、怒らないであげてください。何日も寝てなかったりするのです。
ですから、そうした場合は、主治医ではない、別の医師に意見書をお願いすることになります。原則である30日を超えても、全く動きがない場合は、こちらのケースを想定して、別の医師に相談する必要が出てきます。
主治医ではない医師の場合は、そもそも「意見書」の作成を断ってくることもあります。受けてくれたとしても、普通は被介護者の診察を要求してくることが多いはずです。正しい「意見書」を書くには、必要なことだからです。
医師に「意見書」の作成をお願いする(一般には病院の窓口で行う)とき、単に指定された申請書類を書くだけでなく、そこに「手紙」をつけることをオススメします。この「手紙」には;
(1)被介護者の健康状態;日常的にはどのようなことに苦労しているか
(2)同居人の状況;ひとり暮らしなのか、誰かと一緒に暮らしているのか
(3)住まいのバリアフリー度;すでにバリアフリーなのか、バリアフリーでないのか
(4)お金の問題;比較的裕福なのか、経済的にかなり厳しいのか
(5)受けたい介護サービス;具体的にどのようなサービスが受ける必要があるのか
の5点については、ある医師たちは「あると助かる」とのことでした。ある別の医師は「無くてもよい」とのことでした。ここは、やはりそれぞれの状況により異なるのでしょう。
ただ、介護者としては、医師の状況まではわからないのですから、やはり「あったほうがよい」という結論になりそうです。この「手紙」の作成に、それほど時間はかからないのですから。
本当は可能であれば、主治医に直接、どのような情報が追加であると助かるかを聞ければ最高ですね。
ここで提出する「手紙」でもいいですし、医師に会ったときに直接でも構いません。とにかく、医師への「感謝」を述べることは忘れないでください。
これも知られていないことですが、「意見書」の出来具合と、医師の人事評価には、なんの関係もないのが普通です。医師によっては、医療現場における日々の緊急対応の合間に、眠い目をこすりながら、ギリギリの状態で「意見書」を書いてくれているのです。医師にとって「意見書」の作成とは、実質的にはボランティアなのです。
介護は、感情をもった人間のチームによる長期戦です。介護者としては、周囲を固めてくれる介護のプロに対して、常に感謝の気持ちをもっておくべきでしょう。
KAIGOLABの最新情報をお届けします。