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地域包括支援センターについては、そもそも法律で定められている(介護保険法第115条の46第1項)ので、まずは、そこからみてみましょう。
地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、3職種のチームアプローチにより、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設である。
・・・なんだかわかりませんね。現実には、地域包括支援センターにおける業務は、そのほとんどが、ケアマネの仕事(ケアプラン作成)になっています。本当は、他にも総合的な相談への対応や、法的な問題への対処などもあるのですが、ケアプラン作成の仕事が忙しすぎて、他のことは「やらなくちゃ」と思いながらも、なかなか手が回らないのだとか(あくまでも、数名のセンターの人に聞いた話ですが)。
それもそのはず。2006年の介護保険法の改正以降、それまで民間のケアマネージャーが担ってきたケアプラン作成の半分近い部分が、この地域包括支援センターに移管されたからです。つまり、ケアプラン作成センターというのが実情だということです。
というわけで、現実的なところから理解しようとすると、地域包括支援センターは、要介護認定で、比較的軽めの「要支援1」「要支援2」とされた要介護者のためにケアプランを作成します。また、要介護認定では「非該当」となった高齢者であっても、将来的に介護が必要にならないよう「特定高齢者」として介護予防のための予防ケアプランを作成します。
これに対して、一般の介護事業者は「要介護1〜5」とされた要介護者のためにケアプランを作成しています。つまり、必要となる介護の度合が小さく「介護予防」を扱うのが地域包括支援センターであり、介護度が高くなると、介護事業者の仕事になってくるというわけです。
介護保険の財源は、今後どんどん足りなくなっていきます。そうした中で、介護保険からの出費を圧縮するために、具体的にできることは「介護予防」です。高齢者が、費用のかさむ本格的な介護に突入してしまわないように、先回りして健康の促進を進めるべし、というわけです。
ということは・・・地域包括支援センターの仕事は激務化していくわけです。ですから、市町村が設置主体ではあるものの、民間への委託業務が増えてきます。すると結果として、一般の介護事業者が、その業務まで代行しているケースも多くなってきます(2012年調査;市町村直営約3割、委託約7割)。そうなると、地域包括支援センターとはいえ、現実には、ケアマネの介護事業者となにもかわらないというところに落ち着きやすいわけです。
本来は、要介護認定もまだ受けていないような「特定高齢者」を見つけ出し、そこに対しても介護予防のためのケアプランを作成し、実行していくというのが大事な業務になっていくはずなのです。しかし現実には、増え続ける「要支援」の高齢者のためにケアプラン作成で手一杯で、そもそもどこに「特定高齢者」がいるのかを把握するだけでも大変というのが実情です。
介護をしていて、自分の親の場合は、要介護度も高いから、地域包括支援センターは関係ないと考えてしまうかもしれません。しかし実際は、この間まで「要介護」だった人が、新しい認定では「要支援」となり、地域包括支援センターのお世話になるという話はよくあるものです。
背景には、やはり介護保険の財源が枯渇していくにつれて、要介護認定の基準が年々厳しくなっていることがあるようです。ケアマネに話を聞くと「なんでこの人が要支援2なの?」という、かなり介護への依存度が高いように見える要介護者であっても、評価が「要支援」に格下げになるケースが増えてきているそうです。
こういう話になってくると、本来は「介護予防」に大きな目的があったはずの地域包括支援センターは、介護保険の出費抑制のための方便になってしまいます。そうならないように、自治体は一生懸命ですが、いかんせん「要支援」の増加率が大きすぎます。
ただ、やはり日本の将来の介護を考えるとき、要介護度が高くなってからの対応ではなくて、高齢者がまだ元気な段階からの「介護予防」が非常に大事であることは疑えません。そこで、新たに生み出された構想が「日本版CCRC構想」なのですが、それがうまく行くのか、勝負はこれからです。
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