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病気になったことがあれば、誰もが、看護師の世話になったことがあるでしょう。場合によっては、5分程度の診察しかしてくれない医師よりもむしろ、看護師によって助けられたという実感を持ったことのある人までいるかもしれません。
看護師は、病気になった人が回復するまでの世話をしたり、医師による診察の補助をしたり、病気予防のための教育を行ったり、苦痛を緩和させたりする医療の専門職です。ベテランの看護師になると、若手の医師よりもむしろ豊富な知識を持っていることも珍しくなく、医療の現場になくてはならない存在です。
日本には、約100万人の看護師がいます(2012年時点)。1992年には、50万人に満たない人数しかいなかった看護師が、この20年間で2倍以上になっているという部分は注目に値します。ここには、1992年に「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が制定され、その運用に成功したという事実があります。この法律の第1条(目的)を以下に示しておきます。
この法律は、我が国における急速な高齢化の進展及び保健医療を取り巻く環境の変化等に伴い、看護師等の確保の重要性が著しく増大していることにかんがみ、看護師等の確保を促進するための措置に関する基本指針を定めるとともに、看護師等の養成、処遇の改善、資質の向上、就業の促進等を、看護に対する国民の関心と理解を深めることに配慮しつつ図るための措置を講ずることにより、病院等、看護を受ける者の居宅等看護が提供される場所に、高度な専門知識と技能を有する看護師等を確保し、もって国民の保健医療の向上に資することを目的とする。
この法律が制定され、看護師の人数が一気に増えたことの背景には高齢化があるわけです。つまり、新たに増えた看護師たちの多くが、高齢者の病気や、病気からの回復の世話、終末期における苦痛の緩和などに従事していると考えられます。
看護師の約80%は、病院(大病院や診療所)で働いています。約10%は、老人ホームなどの介護施設で働いています。看護師のイメージとして、大きな建物の中で白衣を身にまとっているというのは、だいたい合っているということです。
しかし、約4%(約4万人)の看護師は、大きな建物の中での仕事ではなく、訪問看護という仕事に従事しています。訪問看護とは、訪問看護ステーションと呼ばれるオフィスから、病気や障害を持った人の自宅に訪問して、看護をするというものです。
介護保険財源の枯渇によって、今後はさらに、施設介護から在宅介護への流れが加速していきます。また、高齢者の数も爆発的に増えていくため、2025年までには、訪問看護師数を、現在の3倍程度(約15万人)にするという計画が走っています。
訪問看護は、看護師の訪問ですから、ベースとなるのは医療保険です。しかし、2000年から開始された介護保険制度の中では、訪問看護は、介護サービスの一つとして位置付けられています。このため、訪問看護は、医療保険と介護保険の2つの制度で管理されているという、特殊な形式になります。
現在、介護保険を利用している人の場合は、訪問看護は、介護保険制度の下で動くことになっています(ただし、病状が悪化した場合などは、医療保険に切り替わることになっています)。
以下、訪問看護が提供してくれるサービスについて、参考文献(黒澤, 2013年)より引用しておきます。こうしたサービスを利用したいと考えている場合は、まずは、ケアマネに相談してみてください。
病状や健康の管理 | バイタルサインのチェック、病状の観察や助言 |
日常生活の看護 | 食事や排泄の管理と援助、清潔保持、服薬管理 |
医療処置 | 褥瘡などの皮膚の処置、カテーテル管理や在宅酸素療法の管理など |
ターミナルケア(終末期の看護) | 痛みのコントロール、看取り体制へのアドバイス |
リハビリテーション | 安楽な体位の助言や日常生活動作の訓練など |
家族の相談や支援 | 介護方法の助言や介護者の相談に応じる |
精神的な看護 | 不安や落ち込みのケア、リラックス法、生活リズムの調整など |
認知症の看護 | 認知症に関する看護や相談支援、コミュニケーションの援助 |
社会資源の活用 | 保険・医療・福祉制度の紹介やサービス提供機関との調整 |
療養環境の整備 | 福祉用具や住宅改修のアドバイス |
退院支援 | 入院先の医師や看護師と連携して退院準備・指導 |
※参考文献
・厚生労働省, 『看護職員の現状と推移』, 平成26年12月1日
・全国訪問看護事業協会, 『訪問看護アクションプラン2025』, 平成25年度
・黒澤貞夫, et al., 『介護職員初任者研修テキスト』, 中央法規, 2013年
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