閉じる

要介護認定・要支援認定の定義と実務的な注意点について【保存版】

要介護認定・要支援認定の定義と実務的な注意点について

必要になる介護負担に応じたレベルの認定

日本の介護保険では、各種介護サービスを利用する前提として、必要となる介護負担のレベルが認定されます。これは、認定を受ける人(被保険者)からの申請によって行われることになっています。

申請を受けた自治体(保険者)は、申請をした人が、本当に介護が必要な状態なのかどうか、また、必要だとしてどの程度の介護負担が求められるのかを認定します。この認定には、全国一律の客観的な基準(要介護認定基準)が用いられます。

このときの認定は、介護は必要でないという非該当という判定を含め、要支援1、2、要介護1、2、3、4、5 の8つのレベルのどれかになります。この認定結果によって、介護サービスを利用するときに、介護保険がカバーしてくれる限度額が決まるのです。

ここで、介護負担が大きいと認定されると、その分だけカバーされる限度額も大きくなります。また、認定結果によっては、利用できるサービスと利用できないサービスもあります。さらに、非該当となっても特定高齢者として認定されれば、介護予防のサービスが利用できることもあります。

要支援と要介護に違いはあるの?

多くの人が疑問に思うのは、要支援と要介護の違いです。実は、申請する人と、その介護に関わる家族の目線からすれば、要支援と要介護に実務的な差はありません。ですから、非該当でない場合は、要支援1、2、要介護1、2、3、4、5 という7つの区分は、実質的には区分(レベル)1〜7として考えて(基本的には)問題ありません。

厳密には、介護保険法によって、要支援状態とは「要介護状態になるおそれがある状態」と定義されています。ですから、要支援状態は、要介護状態よりも軽いと認定された場合の認定結果になります。これに対して、要介護状態については、より細かく規定されています。それは、以下のようなものです。

身体または精神上の障害があるために、入浴、排泄、食事等の日常生活における基本的な動作の全部または一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令(法第7条第1項)で定める区分のいずれかに該当するもの

要介護認定の各種区分(レベル)判定のおおまかな目安

以下に、申請の結果として「なんらかの介護が必要」と認定されるときの各種区分(レベル)のおおまかな目安を示します。これは、主に静岡市の資料を参考にしつつ、一部を KAIGO LAB にて修正したものです。ここの記述は、あくまでも目安にすぎないという点には、特に注意してください。

状態区分
平均的な状態(おおまかな目安)
要支援1
居室の掃除や身の回りの世話の一部に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とすることがある。排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。
要支援2
みだしなみや居室の掃除などの身の回りの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。
要介護1
みだしなみや居室の掃除などの身の回りの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。問題行動や理解低下がみられることがある。
要介護2
みだしなみや居室の掃除などの身の回りの世話の全般に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とする。排泄や食事に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とすることがある。問題行動や理解低下がみられることがある。
要介護3
みだしなみや居室の掃除などの身の回りの世話が自分ひとりでできない。立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作が自分ひとりでできない。歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分でできないことがある。排泄が自分ひとりでできない。いくつかの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。
要介護4
みだしなみや居室の掃除などの身の回りの世話がほとんどできない。立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない。歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分ひとりではできない。自分では排泄がほとんどできない。多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。
要介護5
みだしなみや居室の掃除などの身の回りの世話がほとんどできない。立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない。歩行や両足での立位保持などの移動の動作がほとんどできない。自分では排泄や食事がほとんどできない。多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。

実際の判定では、このような目安ではなくて、介護に必要となる手間を時間(要介護認定等基準時間)に換算するという方法が取られています。厳密には、申請をした人を介護施設で介護すると想定し、そのときに必要になる全ての介護サービスを細かく設定し、それらの介護サービスの提供に必要となる総時間数が計算されています。

なお、この要介護・要支援の認定は、はじめての判定では、有効期限が6ヶ月となります。その後は、認定を更新していくたびに、新たな認定が行われます。こうして更新された認定については、有効期限は12カ月です。ただし、身体の状態に応じて、3カ月~24カ月の認定になる場合もあります。

認定の有効期限が近づいたら、忘れずに更新手続きを行いましょう。更新の手続きは、有効期間終了日の60日前から行えます。この60日前になったら、自治体から更新手続きに関する通知が届くことになっているので、通知を見逃さないように注意してください。

有効期限内であっても、要介護者の身体の状態が大きく変わった場合は認定を再申請(区分変更申請)し、区分の変更を行うことができます。ですから、いちど認定の区分が決定されても、どうにもおかしいというときは再申請を検討してください。

実務的な注意点と具体的な対策

以下、要介護認定における実務的な注意点と、その具体的な対策について、最低限理解しておくべきものを3つほど取り上げておきます。なにごとも、ただ受け身だと損をすることにもなりかねません。積極的に情報を取りに行くことで、介護の負担は軽くすることが可能です。

要支援1、2、要介護1 の軽めの判定では結果にバラツキが出やすい

ここまで見てきたとおり、要介護の認定においては、区分が設定されます。これは、全国一律の客観的な基準にもとずいており、判定においては、どこの自治体でも同じ結果になるべきものです。しかし、現実の判定は、それぞれに異なる人間が行うため、どうしてもバラツキが生まれてしまいます。ある論文(三徳, 2003年)では、特に、要支援1、2、要介護1の3つの、求められる介護の度合いが比較的軽い区分におけるバラツキを問題視しています。どうしても認定がおかしいと感じるときは、ケアマネに相談しながら、認定の再申請を検討しましょう。

自分(家族)も要介護認定シミュレーターを使って判定してみよう

要介護認定を待っているだけでは、どうしても不安になります(申請から判定まで約1カ月かかります)。また、判定が出ても、結果だけでは、どうにも納得感が得られません。そこで、要介護認定を自治体に任せきりにするのではなくて、自分(家族)も、要介護認定シミュレーターを使って、事前に認定区分についての予測を持っておきたいです。ありがたいことに、インターネットでは、各種シミュレーターが無料で公開されています。過去記事では、特に使いやすいと思われる3つのシミュレーターを紹介していますので、そちらも参照してください。

自治体によって財政状態が異なり、受けられる介護サービスも違う

要介護の認定区分が同じでも、自治体によって、受けられる介護サービスが異なります。これは、自治体にも貧富の格差があるからです。自分(家族)が暮らしているところの介護力については、日経ビジュアルデータが『あなたの街の「介護力」は?』というサービスを無料で提供してくれています。また、こうしたことは信じたくないですが、財政的に厳しい自治体では、要介護の認定が低めに出るという噂もあります(その分だけ介護保険の財源が節約できるため)。他の自治体でなら、より高い区分に認定されるところが、不当に低くなるという介護職たちの意見があることは知っておいてもよいでしょう。

※参考文献
・独立行政法人福祉医療機構, 『要介護認定に対する疑問に答える』
・三徳 和子, 『岐阜県における要介護(要支援)認定者率の格差検討』, 川崎医療福祉学会誌(2003年)
・医療法人社団翔洋会, 『介護保険とは』
・静岡市, 『要介護度別の状態区分』

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由