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戦後日本の発展を支えたのは、製造業です。大手メーカーを中心として、その周辺にパーツ供給のための多くの系列企業を組織して、世界的に見ても圧倒的な地位を作ってきました。この背景には、24時間365日、商品の生産に携わってきた人々がいます。
そうした中で築き上げられてきたのが、1日を8時間ごとに区切って、それぞれ分けられた時間で従業員が働くという「三交代勤務」です。当然、夜間のほうが大変な仕事になるわけですが、お盆や正月も関係なく、誰かが、そうした仕事をしてきてくれたからこそ、今の日本があるわけです。
「24時間働けますか?」というCMが流れていたようなモーレツな時代でさえ「三交代勤務」だったのです。しかし、今この時代にあって「三交代勤務」ではなく、個々がより長時間の夜勤をこなす「二交代勤務」で動いている業界があります。・・・介護業界です。
以前より、介護業界の夜勤はキツイという話がささやかれてきました。そうした中、日本医療労働組合連合会(医労連)が、これまで噂だったことを、データで示したのです。以下、朝日新聞のニュース(2016年2月17日)より、一部引用します。
9割近くの介護施設で長時間夜勤につながる「2交代制」を採用しているとする調査結果を、日本医療労働組合連合会(医労連)が16日発表した。施設の約4割には仮眠室がなかったという。(中略)
夜勤形態では、124施設(86・7%)が8時間前後の日勤と16時間前後の夜勤の「2交代制」と答えた。2交代制の施設で働く2159人のうち、816人が週1回超(月4・5回以上)の夜勤をしていた。また、「仮眠室がない」と答えたのは47施設だった。
きちんとした環境で仮眠することもできず、16時間の夜勤を強いられる環境で働かされるのは、どうなのでしょうか。介護職の人材不足が叫ばれて久しいですが、こうした「二交代勤務」に加えて、全産業平均よりも年収ベースで100万円以上も安い賃金で、人材の確保が進むはずがありません。
民間の介護施設に入れるのは、それなりに資産のある人々です。入居費だけで、月額平均で25万円程度がかかり、さらに別途費用がかかります。ざっと、毎月30万円程度の支払いができる人だけが、民間の介護施設に入居しています。
かたや、そうした高齢者のお世話をする介護職員は、手取りが20万円を切ることも多いのです。自分が高齢者になったときは、まず、同じような介護施設に入ることはできません。そうした事実を、16時間という長時間夜勤をしながら、見せつけられるのです。
これはもはや、階級社会です。そして、階級間の格差は広がっているように思います。以前、NASAが「文明は、資源の浪費と貧富の二極化によって滅ぶ」というレポートを発表しています。民間の介護施設が、その象徴のようになっている現実を、放置しておいてよいはずはないのです。
介護職の待遇改善が急務です。それにより人手不足を解消し「二交代勤務」を無くしていかないとなりません。こうして発信したくらいでは、簡単には変わらないかもしれません。しかし、みなで声をあげることをやめてしまえば、チャンスもゼロになってしまいます。
※参考文献
・The Guardian, “Nasa-funded study: industrial civilisation headed for ‘irreversible collapse’?”, March 14, 2014
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