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首都圏の特養には、実質6,000人分の空きがある?

首都圏の特養には、実質6,000人分の空きがある?

入居したくても入居できない特養(特別養護老人ホーム)

特養(特別養護老人ホーム)は、数ある老人ホームの中でも、もっとも人気のある老人ホームです。その理由は簡単で、設備が充実しているのに、国や自治体からの補助があるため、非常に安価に入居できるからです。

特養のイメージでは、毎月10万円前後で、充実したサービスが受けられます。高齢者からしても、年金で入居できる、ありがたい価格設定です。民間の老人ホームだと、サービスの中身はほとんど差がないのに、毎月25万円程度かかるのですから、その差は非常に大きいものになっています。

特養は人気があるため、基本的には、入居したくても入居できない状態が続いています。現在、日本全国で30万人以上が特養の入居待ちをしていると言われており、この状態は、今後も改善する見通しがありません。

入居待ちが続く特養、実は空いている?

そんな特養ですが、実は、部屋は空いていることは以前から指摘されてきました。入居待ちが続いているのに、部屋が空いている理由はただひとつ、特養で働いてくれる人員が足りないからです。人員が足りない状態で強引に入居させてしまえば、事故になってしまいます。

イメージで言うなら、何時間も待たされるレストランで、並びながら中をのぞいてみると、席はけっこう空いているという状態です。普通は怒りたくなりますが、そもそもレストランの規模に対して店員が足りていないのですから、怒っても仕方がありません。

日本全国では、2万人規模で、空き部屋があることがわかっています。そうした背景から、埼玉県では、あらたな特養の建設がストップされたりもしています

首都圏だけで6,000人分の空き部屋がある

そうした中、このような特養の空き部屋は、首都圏だけで6,000人分というニュースが入ってきました。これは、こと介護については、首都圏のほうが、地方よりも深刻な状態であることを意味しています。以下、日本経済新聞の記事(2018年12月16日)より、一部引用します。

高齢化に伴う需要増に逆らうように介護施設の空きが目立ってきた。日本経済新聞が首都圏の特別養護老人ホーム(特養)の入所状況を調べたところ、待機者の1割に相当する約6千人分のベッドが空いていた。介護人材の不足で受け入れを抑制する施設が増え、有料老人ホームなど民間との競合も激しい。国や自治体は施設拡充に動くが、需給のミスマッチを解消しなければ無駄なハコモノが増えていく。(後略)

民間の老人ホームで、毎月25万円も支払える人は少数でしょう。かといって、特養に入居するのはかなり難しい状況になっています。これはすなわち、かなり負担の大きい介護が必要になっても、在宅で、それを支えないとならないということを示しています。

親の介護10年、自分の介護10年を乗り切れるのか?

平均寿命から健康寿命を引き算してできる想定としては、介護は10年程度かかると考えるべきです。自分の親の介護10年(場合によっては両親の介護になるためもっと長期になる)、自分自身の介護で10年は考えておきたいです。

もう、在宅で介護をするのは無理となったとき、老人ホームは最後の砦でした。しかし特養は人員不足で入居できないとなれば、そうした最後の砦は、富裕層だけのものになります。介護離職も増え、ミッシングワーカーになる人も増えると予想されます。

本質的には、人員不足が解消されることが望ましいでしょう。しかし、介護業界の待遇は遅々として改善されることなく、人員不足は今後、より深刻になることが不可避となってしまっています。恐ろしい話ですが、これは日本に暮らすすべての人に降りかかる大きな負担となっていくでしょう。

※参考文献
・日本経済新聞, 『足りない特養、実際には空き 首都圏で6000人分 漂流する社会保障』, 2018年12月16日

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