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特別養護老人ホーム(特養)の課題は、今後ますます大きくなる

特別養護老人ホーム(特養)の課題は、今後ますます大きくなる

国民にとって最後の砦である特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホーム(特養)は、公費が投入されており、お金がなくても入居できる、しっかりとした老人ホームです。普通の老人ホームよりも豪華であるケースも少なくない、国民にとって最後の砦とも言える存在になっています。当然、入居するのは簡単ではなく、多くが、入居まで長期間待たされるような状況です。

そんな特養の稼働率は96%であり、約2万人分のベッドが空いているという状況であることは、以前、紹介しています。たくさんの人が入居待ちをしているのに、ベッドには空きがあるのはおかしなことでしょう。その背景にあるのは、人材不足です。以下、朝日新聞の記事(2018年7月28日)より、一部引用します。

6割超の特別養護老人ホーム(特養)が介護人材の不足に陥っており、そのうち1割は利用者の受け入れを制限している――。そんな調査結果を独立行政法人福祉医療機構が27日、発表した。(中略)

介護需要が高まる中、人材不足が改めて浮き彫りになった調査結果について、同機構は「働きやすい環境作りによって人材不足を解消し、既存施設の十分な活用が必要だ」とコメントしている。

自分が特養の入居待ちをするようになる未来

親に介護が必要になって、その負担が異常に大きくなった場合、老人ホームへの入居を考えなければなりません。そのとき、民間の老人ホームは、自己負担部分として、月額25万円くらいはかかるものと考えておく必要があります。そして、これだけのお金を軽く出せる人というのは、富裕層だけです。

そうなると、考えることになるのが、特養です。特養は、数万〜10万円程度と格安で、かつ、設備やサービスが充実していることも多いのです。当然ですが、入居希望者は殺到しており、入居待ちが長蛇の列になっていることがほとんどです。

入居待ちをするようになったら、その理由は、普通は、ベットが満床だからと思うでしょう。しかし、入居待ちになる理由は、働いてくれる職員がいないことだったりするのです。今はまだ、先の記事にあるように、特養のうちの1割程度にすぎないかもしれません。しかし今後はますます、この状況は悪化するでしょう。

人材不足をなんとかしろと言われても・・・

人材不足は、特養のみならず、ほとんどすべての介護事業者に共通する問題です。特に東京都と愛知県では、介護人材の有効求人倍率が5倍を超えており、もはや「誰でもいいから、すぐにでも来てもらいたい」というところも増えています。

それでも、そもそも介護業界の待遇は、全業界でもダントツの最下位にあると言われます。介護には高い専門性が求められるにも関わらず、介護業界で働いていると手取りで20万円もいかないケースも多いのです。

そうした業界の有効求人倍率が跳ね上がるのは当然のことです。それでも、売り上げのほとんどを公費(介護保険料と税金)でまかなっている介護業界は、こうした待遇を自助努力で改善する手立てがありません。今後も特養は高値の花となり、本当に運のよい人しか入居できない状況は、さらに悪化しそうです。

※参考文献
・朝日新聞, 『特養の6割超が介護人材不足 空床あるのに受け入れ制限』, 2018年7月28日

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