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大雪が訪問介護を阻害する?無届けの介護ハウス急増の背景

大雪が訪問介護を阻害する?無届けの介護ハウス急増の背景

大雪の影響は社会的弱者に向かう

今年の冬は、黒潮の蛇行とラニーニャ現象という、大雪につながる自然現象が同時に発生しました。大雪に対する注意が呼びかけられましたが、実際に大雪となり、その影響で亡くなる方まで出てしまいました。当然、訪問介護が大雪の影響で大変な状態になった地域もあります。

ただでさえ人材不足から介護が手薄になる地方において、雪によって介護事業者が現場にたどり着けないという状況が生まれたのです。このこの冬の大雪が介護に及ぼした影響について、中日新聞が記事(2018年2月21日)にしています。以下、その記事より一部引用します。

北陸地方を襲った記録的な大雪は高齢者福祉の現場を直撃した。中でも配食や訪問介護など在宅生活を送る高齢者へのサービス提供を雪が阻み、一時休止や縮小といった影響が相次いだ。災害は大雪に限らない。いざというときに孤立を招かないために、関係者は「地域のつながりを見つめ直す機会に」と指摘する。(中略)

金沢市の配食サービスは二十業者に委託し高齢者千人が利用する。休まずに配達を続けた業者があった一方、市長寿福祉課によると、六日昼には七業者が休止。雪が落ち着くとともに徐々に再開されたが、影響は十二日まで及んだ。三日間休止した業者は「生活道路まで車が入り込める状況ではなかった」と話した。

市から配達休止の連絡を受けた各地の地域包括支援センターは対応に追われた。利用者に個別に連絡を取り、食品のストックがない場合はヘルパーサービスに代替して総菜を届けたり、近所の人や民生委員に連絡して様子を見てもらったりした。(後略)

雪国では無届けの介護ハウスが多いという現実

日本には無届けの介護ハウスというものが存在し、それが拡大しているとされます。無届けということ自体は悪いことなのですが、現実的に、それを必要とする高齢者が多数いるにも関わらず、そうしたサービスが公的に提供されていないことのほうが問題です。

背景には、安くて品質の高いサービスを提供してくれる特別養護老人ホーム(特養)には、長蛇の列ができていて、なかなか入居できないことがあります。特養に入れないならということで、民間の老人ホームを探そうにも、どこも月額25万円以上といった価格感で、普通の人は入居できません。

民間の老人ホームが高額になってしまう理由は、国や自治体の指導による様々な安全規制をクリアするためのコストが高いからです。であれば、こうした規制を無視して、高齢者のシェアハウス的な位置づけで介護サービスも提供するという、いわゆる無届けの介護ハウスという存在が求められるのも仕方がないでしょう。

こうした無届けの介護ハウスは、雪国に多いともされます。その理由は簡単で、雪国では、屋根からの雪下ろしや雪かきといった高齢者には辛い作業があるからです。さらに、今回のニュースにあるように、いざ大雪となると、生命の危険さえあります。それならば、早いうちにシェアハウス的なところに転居したほうが合理的でもあります。

無届けの介護ハウスを認可していく流れが必要

もちろん、こうした無届けの介護ハウスは、玉石混交です。素晴らしいところもあれば、大いに問題のあるところもあります。しかし、無届けだからということで、もはや無視できないところまで拡大してしまっています。

介護施設と在宅介護の中間という意味では、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)というものがあります。しかしサ高住もまた、主に富裕層を相手にしている存在であって、実質的に介護施設に近いものになりつつあります。

本当の意味で、安全で豊かな高齢者のためのシェアハウスを安価に提供するという方向を模索すべきだと思います。そのときは、無届けの介護ハウスの中での成功事例などを、しっかりと横展開する形をとることが大事になるでしょう。

※参考文献
・中日新聞, 『大雪 高齢者福祉阻む 配食、訪問介護で休止や縮小』, 2018年2月21日

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