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社会福祉の世界には、誰もがありのままの状態(ノーマル)で暮らせることを目指すノーマライゼーションの理想があります。この理想からすれば、実質的に高齢者を閉じ込めることになる老人ホームという存在は、いずれは解消されるべきものなのです。
しかし、社会福祉の分野において先進的な取り組みを見せてきた北欧においても、老人ホームは、なくなってはいません。それでも少しずつ、その枠に対するチャレンジは生まれてきています。以下、Yahoo!ニュースの記事(2017年7月31日)より、一部引用します。
安い宿泊料で学生は老人ホームに滞在し、高齢者は若者と交流できる。そのような取り組みをノルウェーの野党・最大政党の労働党が提案した。
国営放送局NRKによると、同党の副党首であるタジク国会議員は「学生と高齢者は共にチームとなり楽しい時間を過ごし、職員はその時間を他の労働作業に費やすことができる」とテレビ局に回答。
試験的プロジェクトとして実行できるように労働党は提案する予定。同議員によると、オランダでは同様の取り組みがなされており、安く宿泊できる代わりに月30時間の高齢者との交流が条件となっている。(後略)
このように、老人ホームを地域社会に解放していくという流れ自体は、日本にも存在しています。少しずつではあっても、日本でも、ノーマライゼーションの理想に向けた取り組みは存在しているし、進んできてはいます。
ただ、今回のニュースのように、老人ホーム内に滞在し、高齢者と若者が日常的に交流するというレベルになると「さすが北欧」という気持ちにもなります。交流させるというと、なんとなく簡単に聞こえますが、介護現場からすれば、リスクも相当あるからです。
たとえば、簡単な気持ちで、老人ホームへの入居を決めた若者がいたとします。そうした若者は、介護に関する基本的な知識もないでしょう。そして気軽に、高齢者に対してお菓子でもあげてしまうかもしれません。高齢者は、そのお菓子によって誤嚥(ごえん)を起こし、亡くなってしまうかもしれないのです。
逆に考えると、若者にとっては、老人ホームでの経験を通して、高齢者に対する理解を深めていくという面もあるでしょう。そうしたことが積み上がってはじめて、ノーマライゼーションの理想もまた、実現に近づいていくのです。
どのみち、未来の老人ホームは、現在の私たちがイメージしているものとは、かなり異なるものになっているはずです。より地域社会に開かれたものであるばかりでなく、高齢者の側からしても、出入りがより自由なものになっているでしょう。
※参考文献
・Yahoo!ニュース, 『老人ホームが学生寮に?高齢者と若者の交流促進へ ノルウェーの政党が提案』, 2017年7月31日
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