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自治体の「断らない相談窓口」の設置が議論される

自治体の「断らない相談窓口」の設置が実現する?

いちいち相談先が異なるという縦割り行政問題

KAIGO LABでも、これまで「ダブルケア」というカテゴリで何度も主張してきた通り、育児と介護の両立に苦しむ人々は、それぞれに異なる自治体の窓口を使う必要があります。しかし実際には、育児と介護の両立には、それ相応の専門性が求められ、育児だけ、介護だけの相談では解決できない問題があるのです。

こうした、いわゆる「縦割り行政」と言われる問題について、いよいよ、厚生労働省が具体的な対応を打ち出し始めました。それは、いかなる相談でも一箇所で受けるという「断らない相談窓口」の設置です。以下、朝日新聞の記事(2019年6月25日)より、一部引用します。

介護や病気、ひきこもりなど複数の問題を抱える人や家庭への一体的な対応を目指し、厚生労働省は、市区町村が一つの窓口で相談を受け付けられる体制整備を進める。住民が問題ごとに別々の窓口をたらい回しにされる現状を改め、ワンストップで対応する「断らない相談窓口」への転換を図る。来年の通常国会での関連法改正を目指す。

厚労省によると、支援を必要とする人の60%は問題を二つ以上、34%は三つ以上を抱えている。たとえば病気に苦しむ80代の親が、50代のひきこもりの子どもと同居する「8050(はちまるごーまる)問題」に直面していたり、現役世代が、親の介護と子育ての「ダブルケア」で負担が重くなっていたりする。(後略)

相談内容のデータベース化が重要であり価値が高い

この「断らない相談窓口」で入手できる相談内容は、非常に価値の高いものになります。そうした相談内容は、対応策と合わせてデーターベース化し、日本全国の自治体でシェアできるようにすれば、それによって助けられる人も増えて行くでしょう。

いずれは、そうしたデーターベースは、チャットボットになり、無人でもそれなりに相談に対応できるようにもなるでしょう。窓口が国家レベルで一本化されれば、それだけ、同じ相談が入ってくる可能性も高まります。同じ相談には、同じ対応ができるので、仕事の効率も高まるでしょう。

とはいえ、2つの相談内容が背景まで含めて完全に一致することはありません。そうした個別性の部分には、どうしても人間の相談員による個別の対応が必要になるでしょう。そうした意味では、相談員は、このデータベースが実現すれば、本来のよりクリエイティブな仕事に集中できるようになります。

日本の縦割り行政を終わらせることができるか?

今回の話は、あくまでも、厚生労働省の管轄内での話でしょう。これが、他の省庁との垣根も超えた国民の相談窓口として発展していけば、本物のサイバー行政が実現することになります。それが実現すれば、国家経営の生産性もずっと高まるでしょう。

例えば、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、実は、国土交通省の管轄です。しかし、一般からすれば、サービス付き高齢者向け住宅も、介護関係の施設の一つであり、一つの窓口で対応してもらいたいところです。しかし、行政側からすれば、それはきっと難しいことでしょう。

しかし、そこまで行かないと、本当の意味で「断らない相談窓口」の実現はできません。なんとか、縦割り行政を超えて、真の意味でのサイバー行政に向けた活動をしていただきたいです。今回の厚生労働省による「断らない相談窓口」の設置提案は、その第一歩になっているわけです。

※参考文献
・朝日新聞, 『介護、病気、ひきこもり…すべて「断らない相談窓口」へ』, 2019年6月25日

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